人を雇う・育てる

飲食店のバイト面接、店主が本当に見ていること——「何か質問ありますか?」の前に、結果は決まっています

閉店後の飲食店のテーブルに、無地の用紙とペン、湯呑みが二つ向かい合って置かれている

結論から言いますね。

面接の最後に、「何か質問ありますか?」って聞かれるじゃないですか。あそこで合否が決まると思ってる人、けっこう多いと思うんですよね。

決まってません。その前に、もう決まってます。

地方で小さなラーメン屋をやっている店主です。これまで、高校生から大人まで、何人も面接してきて。今日は、飲食店のバイト面接で、雇う側が本当は何を見ているのかを、正直に書きます。

求人サイトには、「よく聞かれる質問」や「志望動機の例文」がたくさん載ってますよね。でも、店主が心の中で何を思ってるかは、たぶん、どこにも書いてない。だから、それを書こうと思って。

よく聞かれること、店主が本当に見ているところ

先に、全体を表にしておきますね。

面接で聞かれること 店主が本当に見ているところ
服装 おしゃれかどうかではなく、どういう思いで来たか
志望動機 「家が近いから」を、何番目に言うか
頑張ったこと・苦労したこと 「なんで?」と聞かれても、答えが続くか
「何か質問ありますか?」 それまでの受け答えの、答え合わせ

ひとつずつ、いきますね。

服装は、「マイナスからのスタート」になるかどうか

服装、気になりますよね。

正直に言うと、ダボダボの服を着てきたり、汚れてる服で来たりした場合。僕は、**「ああ、そういう思いで、ここに来たんだな」**って受け取っちゃうんですよね。

それだけで落とす、とは言いません。でも、その目線で面接が始まる。つまり、マイナスからのスタートになるんですよ。

逆に言うと、服装で点数が上がることは、あんまりないんですよね。服装は、加点するところじゃない。減点されないようにするところです。

志望動機の「家が近いから」は、2番目に言う

次は、志望動機。

これもね、正直に書きますけど。学生さんの志望動機って、**ほとんどが「家が近いから」**なんですよ。

それ自体は、別に悪くないんですよ。本音だと思うし、通いやすいのは大事なことなので。

でも、それを一番に出してきたら、不採用です。

「ここで働きたい理由は、◯◯です。それに、家も近いので」。こう言ってくれたら、いいんですよ。近いからは、むしろプラスになる。

ところが、一番目に「近いからです」が来ると、「あ、なんだ」ってなっちゃうんですよね。うちじゃなくても、近ければどこでもいいんだな、って。

同じ「近いから」でも、何番目に言うかで、受け取り方がまるで変わる。 ここ、応募する側からは、たぶん見えてないと思います。

本物の志望動機って、本人が気づいてないところに埋まってることもあるんですけどね。雑談の中から本物が出てきた話も、前に書きました。

ラーメン店の洗い場で、白い調理着の人が丼を洗っている後ろ姿。奥に客席とのれんが見える

本当に見ているのは、受け答えの「中身」

じゃあ、面接の途中で「あ、この人は大丈夫だ」と思うのは、どこか。

受け答えの中身です。

僕、たまに、ちょっと難しい質問をするんですよ。

「今まで、頑張ったことって何ですか?」 「今までで一番苦労したこと、挫折したことって何ですか?」

で、答えてもらったら、そこから深く聞いていく。「それは、なんでですか?」「なんで、そうなったんですか?」「どうして、そう思ったんですか?」って。

ここで、何も答えられなくなる人がいるんですよ。

立派な話を聞きたいわけじゃないんですよ。部活でも、勉強でも、家のことでもいい。ただ、「なんで?」と聞かれたときに、自分の言葉で答えが続くかどうか。続かない人は、正直、中身がない。

もちろん、中身がなくても、勢いでスパーンといい仕事をする人もいます。そこは、否定しない。

でも、何も考えてない人とは、正直、あんまり働きたくない。 これが、本音です。

「何か質問ありますか?」で、合否は決まらない

さて、冒頭の話です。

面接の最後に、僕も「何か、うちの店に質問はありますか?」って聞きます。そこで、印象に残っている質問が二つあるんですよね。

採用した人の質問

ひとつは、こういう質問でした。

「この会社が、一番大事にしていることは何ですか?」

これを聞かれたとき、思ったんですよね。この人は、うちの方針に沿った働き方をしたいんだな、って。

僕は、こう答えました。

「お客さんには、気分よく来て、気分よく帰ってもらいたいと考えています。だから、『いらっしゃいませ』は必ずお客さんのほうに向けて言う。洗い物をしてても、下を向いてても、背中を向けてても、です。忙しいは理由にならない。むしろ、忙しいからこそ効くんですよ。お客さんは『あんなに忙しいのに、こっちを見てくれた』って思うので。ラーメン屋なんて、たくさんあるじゃないですか。その中で『ここに来てよかった』って思ってもらえる仕事をする。それを、一番大事にしています」

もちろん、その人は採用しました。

で、ここからが大事なところで。

僕は、その質問が来る前に、もう採用を決めてたんですよ。

そこに至るまでの受け答えが、すでにすごく良かったので。そこに、さらにこの質問が来た。

なんて言うんだろう。採用される人だからこそ言えるセリフ、っていうのがあるのかな、って思いましたね。

その人がどうなったか。ここ最近で、一番の大当たりでした。前に書いた、面接で「姉を超えたいです」と言った、あの挑戦者です。初日の様子も書いているので、よかったら読んでみてください。

採用しなかった人の質問

もうひとつは、こういう質問でした。

「営業時間って、何時なんですか?」

……おいおい、って思いましたよね。営業時間、聞いてくるのかよ。そんなもの、調べればすぐ分かるじゃないか、って。

この質問を聞いて、「ああ、もうこの人じゃないな」と分かりました。

でも、これも同じで。その質問が来た時点で、僕はもう、採用しないと決めてました。 決めていたところに、さらにその質問が来た。それが、答え合わせになった、という感じです。

最後の質問は、答え合わせ

だから、これは一応、言っておきますね。

最後の質問をしたからといって、採用か不採用かが決まるわけじゃないんですよ。 結果は、その前に、もう決まってる。

いい質問で逆転できるか、というと、たぶん、できない。逆に、それまでが良ければ、最後の質問で「やっぱりな」になる。

で、面白いのは、採用した人と採用しなかった人で、質問の向きがまるで違ったことなんですよ。

「一番大事にしていることは?」は、店のことを知ろうとする質問です。調べても分からないことを、本人に聞いている。

「営業時間は?」は、調べれば分かることを、そのまま聞く質問です。

最後の質問って、たぶん、その人がそれまでどういう気持ちで面接に座ってたかが、そのまま出るんですよね。だから答え合わせになるんだと思います。

閉店後の厨房で、洗い終えた丼が棚に並び、布巾が掛けられている

次の面接から、変えること

ここまで、えらそうに書いてきましたけど、僕も、まだ途中です。

面接で分かるのは、半分くらいだと、前に書きました。残りの半分は、働いてみないと分からない。

その半分を、少しでも面接の中で確かめたくて。次の面接から、実際に「いらっしゃいませ」を言ってもらうことにしたんですよ。僕がお客さん役になって、です。

理由は、シンプルで。

「この人、たぶん『いらっしゃいませ』くらいは言えるだろうな」。その期待で採っちゃうと、あとで「やっておけばよかった」になるんですよ。だから、期待はしない。その場で、確かめる。

さっきの「一番大事にしていること」の答えが、そのまま面接の中身になった感じです(自分で言うのもなんですけど、筋は通ってると思います)。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも、書いておきます。

「緊張して、うまく話せなかったら、それで終わりですか?」

終わりじゃないです。緊張は、全員してるので。

僕が見てるのは、声の大きさとか、話す速さじゃないんですよね。うまく話せなくても、聞かれたことに、自分の言葉で答えが返ってくるか。見てるのは、そこです。言葉に詰まっても、中身がある人は、ちゃんと分かりますよ。

「じゃあ、最後の質問は、しなくてもいいってことですか?」

合否は、そこで決まらない。それは、本当。

でも、「この店のことを、もっと知りたい」と思って座っている人なら、聞きたいことは自然に出てくると思うんですよ。無理に用意した質問より、その店の何が気になったのかを、そのまま聞けばいい。それが一番、伝わると思います。

「店主の好みで決めてるだけじゃないですか?」

そう見えるかもしれません。でも、僕が決めているのは、好き嫌いじゃなくて、**「この人と、お客さんに『ここに来てよかった』と思ってもらえる仕事ができるか」**なんです。採用は確率論なので、外れを引かないために、見るところを決めて見ています。

夕方の飲食店の入口。外したのれんが壁に立てかけられ、ガラス戸から柔らかな光が入っている

面接は、入ってきたところから始まっている

まとめますね。

飲食店のバイト面接で、店主が見ているのは、ここです。服装は、どういう思いで来たか。志望動機は、「家が近いから」を何番目に言うか。頑張ったことは、「なんで?」に答えが続くか。

そして、最後の「何か質問ありますか?」で、合否は決まりません。結果は、その前に決まっていて、最後の質問は答え合わせです。

これから面接を受ける人に、ひとつだけ言うなら。

面接は、最後の一言で逆転する場所じゃない。入ってきたところから、ずっと見られてる場所です。でも、それは怖い話じゃなくて、裏を返せば、ちゃんと準備して来た人は、ちゃんと伝わるってことなんですよ。

僕の店が大事にしているのは、「ここに来てよかった」と思ってもらうこと。面接も、たぶん同じで。応募してくれた人にも、そう思ってもらえる面接にしたいんですよね。