「会社は、学校じゃないんだよ」——新人の初日に、必ず言うこと

開店前の店内で、店主と若いスタッフが向かい合って立っている

うちに新人が入るとね、初日に必ず言うことがあるんですよ。

もう口癖みたいになってて、気づいたら言ってるんですけど。

「会社は、学校じゃないんだよ」

今日は、この一言の中身の話をします。

学校と会社の、決定的な違い

これ、ほとんどの人が気づいてないと思うんですけど。

「ここで勉強したいです」「成長したいです」って言う人、多いじゃないですか。面接でもよく聞きます。気持ちは分かるんですよ。

でもね、正直に本音を言いますね。これはスタッフには言わないんですけど——

「勉強したい、成長したいんだったら、お金払ってくれよ」

……って、思っちゃうんですよ(笑)。だって、それは学校でしょ?

学校は、自分のお金を払って、習いに行くところ。

会社は、お金をいただきに来るところ。

ここ、完全に逆なんですよ。お金の流れが逆向きなんです。

だから会社で基本になるのは「何を教わるか」じゃなくて——「自分は何を貢献できるか」。「私の持ち味はこれです、これを提供できます」。そっちなんですよね。

成長は、勝手にするものなんですよ

じゃあ成長はどうでもいいのかというと、違います。

成長っていうのは、自分で勝手にしていくものなんですよ。

勉強する人ってね、言われなくても、自ら進んで勉強するんです。で、そっちのほうが絶対に伸びる。

「教わりたい」っていう受け身の姿勢——勉強したい気持ち自体はいいんですよ。でも受け身のままだと、正直、伸びないんです。言われてから動く人は、言われたぶんまでしか動かないので。

誰もいない教室。机と椅子に朝の光が差し込んでいる

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

今日は自分へのツッコミが本体です。じっくりいきます。

「いや、あなた、めちゃくちゃ教えてますよね?」

——右ストレートが来ましたね(笑)。

そうなんですよ。このブログを読んでくれてる方は知ってると思いますけど、僕、遅刻した子に三つ伝えたり、「メモ帳持ってきてね」って言ったり、たっぷり教えてるんです。

矛盾してるように見えますよね。自分なりに整理すると、こうなんです。

僕が渡してるのは、きっかけなんですよ。

学校ってね、座ってれば授業が始まるんです。黙って座ってれば、先生が来て、時間割どおりに教えてくれる。

うちは違う。取りに来ない人には、何も始まらない。 メモ帳の話だって、「持ってきてね」まではこっちが言うけど、開くかどうかは本人なんですよ。

あと、鼻声に気づいて「調子悪いの?」って聞くのは——あれは教育じゃなくて、人としてのコミュニケーションです。そこは学校も会社も関係ない。

だから「会社は学校じゃない」は、「教えない」って意味じゃないんです。「ふわふわしてるんじゃないぞ、ピリッとしろよ」——うまく言えないんですけど、姿勢の話なんですよ。

「初日にそれ、きつくないですか?」

きついと思います。初日って、いちばん緊張してて、不安な状態じゃないですか。そこにこの言葉だけ聞いたら、「うっ」となると思うんですよ。

でもね——初日だから、言うんです。

学校なら、座ってれば時間が過ぎていく。でもここは、そういう場所じゃない。「あ、半端な覚悟じゃダメなんだな」って最初に分かるのは、きついけど、その子のためになると思ってて。

あとから知るほうが、よっぽどきついんですよ。ふわふわしたまま一ヶ月過ごして、それから「実はね」って言われるほうが。最初の一杯が濃いめなのは、わざとです。

「技術ゼロの高校生に『貢献しろ』は、重くないですか?」

いい質問です。ここ、いちばん誤解されたくないところなので。

正直ね、高校生なんて、みんな似たようなものなんですよ。特別な技術やスキルがあるわけじゃない。それはこっちも百も承知で雇ってます。

じゃあ、初日から出せる「貢献」って何か。

明るさ。元気。テキパキ動くこと。素直な心。ちゃんとお礼が言えること。

——これなんですよ。

「あんたは元気よくやりなさいよ」っていう。それだけで、店の空気がひとつ明るくなる。それはもう、立派な貢献なんです。技術はあとから付いてくるけど、明るさと素直さは初日から出せる。むしろ、初日がいちばん出せるんですよね。

真新しいエプロンを、両手で受け取る手元

何を持ってきたか

まとめますね。

「会社は、学校じゃないんだよ」——初日にこれを言うのは、意地悪じゃないんです。

お金の流れが逆だと知ってるかどうかで、働き方が全部変わるからです。

学校は、払って、座って、待つ場所。会社は、いただいて、動いて、渡す場所。

だから初日に聞かれるべきは「何を教わりに来たか」じゃなくて、**「何を持ってきたか」**なんですよ。

技術じゃなくていい。明るさでいい。元気でいい。素直さでいい。

——で、面白いことにね。

成長って、貢献してる人のところに、勝手にやって来るんですよ。

元気に動いてる子は、周りが教えたくなる。素直にお礼を言う子には、次の仕事が回ってくる。取りに来る人のところに、全部集まってくるんです。

成長したくて入ってきた子が、貢献を先にやったら、結局いちばん成長する。——順番が逆なだけなんですよね。