バイトがすぐ辞める、その対策——「辞める人は辞める」と思っている店主が、それでも振り返る理由
2026-10-23

バイトが、すぐ辞める。
入ってくれたと思ったら、1週間で来なくなる。せっかく教えたのに、また求人からやり直し。……これ、飲食店をやってる人なら、一回は経験してるんじゃないかな、と思って。
対策の話をする前に、先に、僕の本音を言っておきますね。
辞める人は、すぐ辞めます。僕は、そう思ってます。
いきなり身もフタもないですよね(笑)。でも、ここをごまかすと、この先の話が全部うそっぽくなっちゃうので。
ただ、もうひとつ。「なんだよ」で終わらせるのも、違うと思ってるんです。今日は、その両方の話を書きます。
地方で小さなラーメン屋をやっている店主です。人を雇って、何年も現場に立ってきた人間として、正直に話しますね。
いちばん早く辞めた人は、1か月もたなかった
うちで、いちばん早く辞めた人の話からします。
出勤したのは、ほんの数回。そこから、連絡がつかなくなりました。
LINEを送っても、返事なし。必要な書類を封筒で送っても、音沙汰なし。入ってから辞めるまで、1か月もなかったですね。
もちろん、貸していた店のTシャツと前掛けは、返ってきてません。
……まあ、こういうことって、あるんですよ。どこの店でも。
求人を出して、面接して、制服をそろえて、最初の仕事を教えて。こっちは、それなりに準備して待ってるわけじゃないですか。それが、何も言われずに、ふっと消える。
正直、腹は立ちます。 それは、隠してもしょうがないので書いておきます。
続く人は、最初の1週間で「待たない」
じゃあ、すぐ辞める人と、長く続く人。何が違うのか。
これ、僕の中では、けっこうはっきりしてて。
続く人は、前向きに進んでるんですよね。
自分から進んで、物事をやろうとする。指示を待たない。分からなければ、質問する。周りに、声をかける。
この「待たない」が、最初の1週間で、もう出るんです。
逆に、言われるまで立ってる、分からなくても聞かない、っていう人は……そのまま、なんとなく来なくなることが多い気がします。
ここ、勘違いしてほしくないんですけど、仕事ができるかどうかの話じゃないんですよ。最初の1週間なんて、誰だってできないので。できない中で、自分から一歩出るかどうか。そこを見てるんですよね。
返事ひとつにも、それは出ます。このへんは、「はい」に熱はあるか、という話にも書きました。
新人には、雑談を多めに入れる
じゃあ、店のほうは何をしてるのか。
新人さんが入ったら、僕、雑談を多めに入れてます。
だって、最初は緊張するじゃないですか。知らない店で、知らない人に囲まれて、包丁も鍋も初めて触るものばかりで。その状態で、仕事の話だけされたら、息が詰まっちゃうと思うんですよね。
だから、どうでもいい話をする。で、向こうからも話しかけられるような空気を作る。
これ、さっきの「待たない」「質問する」につながってて。質問できる空気がない店で、「なんで質問しないの」って言うのは、こっちの都合なんですよ。聞ける空気は、先に店が用意しておく。それが、雇う側の最初の仕事だと思ってます。
雑談のおかげで、新人さんの本音が見えたこともあります。入ったばかりのスタッフに雑談を振られた日の話も、よかったら。

でも、甘やかさない
ここからが、たぶん、他の「すぐ辞める対策」の記事と違うところです。
雑談は多めに入れる。でも、甘やかさない。
これは、昔も今も、ずっと変わってないんですよ。
なんでかって、「この店は緩い場所だ」と思われたら、仕事が緩くなるからです。で、それは本人だけじゃ済まないんですよね。周りのスタッフも、その熱量に引っぱられちゃう。
ラーメンで言うと、スープなんですよ。一人分の水で薄めたら、寸胴まるごと薄くなる。一杯だけ薄い、ってことには、ならないんです。
だから、意識は高いまま、やってもらう。そこから外れたら、しっかり注意する。注意しても直らなければ、「ちょっと、うちではできないよ」という話をする。
……厳しいと思います? でも、これ、ちゃんと最初に言ってるんですよ。新人さんの初日には、必ず。そのときの話は、「会社は、学校じゃないんだよ」に書いてます。
雑談でほぐすのと、甘やかすのは、別物です。 空気はやわらかく、仕事の線は動かさない。僕がやってる対策って、結局、これだけなんですよね。
「辞める人は辞める」。それでも、振り返る
で、最初の話に戻ります。
すぐ辞める人は、すぐ辞める。僕は、そう思ってます。どんなに雰囲気を作っても、どんなに丁寧に教えても、辞める人は辞める。
ただ、その中で、自分の反省はしたほうがいい。
1週間で辞めちゃった。なんだよ、って思う。それは、思っていいんです。人間なので。
でも、そこで一回、立ち止まる。**店のほうに、落ち度はなかったかな。直すところ、あったかな。**その時間は、ちょっとはあったほうがいいと思ってます。
ただ、ひとつだけコツがあって。
すぐには、振り返れないんですよ。
辞められた直後って、こっちも熱くなってるじゃないですか。その状態で振り返っても、「あいつが悪い」しか出てこない。だから、ちょっと時間を置く。頭が冷えたころに、もう一回、思い出してみる。
そうすると、見えてくるんですよね。教え方が早すぎたかな、とか。あの日、忙しくて一回も声をかけなかったな、とか。
全部が店のせいじゃない。でも、全部が本人のせいでもない。その「店のせいの分」だけは、次の人のために直せる。 振り返るって、そういうことだと思ってます。
昔、やる気がないように見えた新人さんと電話で話したら、問題は本人じゃなくて、店のルールのあいまいさだった、ってこともありました。そのときの話も、よかったら読んでみてください。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも、書いておきます。
「甘やかさないから、辞めるんじゃないですか?」
それは、あると思います。うちの線が合わなくて辞めた人も、いると思う。
でも、緩くして引き止めた人が、周りの熱を下げるなら、それはもっと困るんですよ。さっきのスープの話です。だから、そこは選んでます。残ってほしいのは、人数じゃなくて、店の熱のほうなので。
「じゃあ、すぐ辞められて悩んでる店主に、何かアドバイスは?」
これは、正直に言うと、ケースバイケースです。
店主がダメな場合もある。そもそも、ルール作りがダメな場合もある。そもそも、店が汚くて、それじゃ無理だよ、っていう場合もある。
なので、一言では言えないんですよね。ごめんなさい。
ただ、ひとつ言えるとしたら、それを確かめるのが、さっきの「時間を置いて振り返る」なんです。店主か、ルールか、店そのものか。原因は、自分の店の中にしかないので。
「結局、すぐ辞める人を見抜く方法はないんですか?」
ないです。面接で分かるのは、半分くらいなので。そのへんは、バイト面接で店主が本当に見ていることに書きました。
バイトがすぐ辞めて悩んでいる人へ
まとめますね。
辞める人は、すぐ辞めます。それは、どこの店でも起きることで、あなたの店だけじゃないです。
そのうえで、僕がやってるのは、3つだけです。
新人さんには、雑談を多めに入れて、聞ける空気を作る。でも、甘やかさない。仕事の線は、最初から最後まで動かさない。そして、辞められたら、時間を置いてから振り返る。
「なんだよ」と思うのは、仕方ないです。僕も思います。
でも、その「なんだよ」のあとに、一晩だけ置いてみてください。冷えた頭で振り返ったとき、もし店のほうに直すところが見つかったら。それは、次に入ってくる人への、いちばんの対策になると思うんですよね。
