スタッフと働く

注意すると泣く部下に、それでも言った——「合わないので辞めます」のLINEを、僕は引き止めなかった

閉店後のラーメン店の客席。テーブルに椅子が二つ向かい合い、照明がひとつだけ点いている

先に、結果から書きますね。

注意をした5日後、そのスタッフから「辞めます」とLINEが来ました。

で、僕は、引き止めなかった。翌日には話をして、お互い納得したうえで、その日で辞めてもらって。

前に、人によって声を変える店員の話と、やる気に熱量を合わせない話を書きました。そこで、「どこかのタイミングで、仕事終わりにちゃんと言おうと思ってる」と書いたんですけど。

言いましたよ。今日は、その続きの話。

「いらっしゃいませ」が、棒読みだった

何が気になってたか。

「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」が、棒読みなんです。

それから、「お好きな席どうぞ」。これを、言い切ってから振り向くんじゃなくて、言いながら、もう振り向いてる。分かりますかね。お客さんに向けて、言い終わってないんですよ。

僕、これがすごく嫌で。お客さんを、ちょっと雑に扱ってるように見えるんですよね。

しかも、その子、スタッフ同士で雑談してるときは、楽しそうに話すんですよ。でも、仕事になって「いらっしゃいませ」になると、途端にトーンが下がる。

前の出勤のときも、そんな感じで。

で、思ったんです。あ、これ、今言わないと、俺、この子のこと、どんどん嫌いになるなって。

前に一度、それで失敗してるんですよね。注意しても変わらないスタッフと距離を取って、気づいたら、もう終わってた。あれを、二度とやりたくなかったので。

仕事終わりに、テーブルに座ってもらった

だから、仕事が終わったあと、「ちょっと話があるよ」って、テーブルに座ってもらって。

注意するのは、これで3回目。

最初は、「最近、どう?」って聞いたんですよ。返ってきたのは、「まあ、普通です」。

で、次に聞いたのが、これ。

「接客するとき、何を考えてる?」

返ってきたのは——

「いや、何も考えてないです」

……正直、ちょっとこけそうになりました(笑)。普通、それ、言えないじゃないですか。

でも、そうか、だから雑な仕事になるんだな、とも思ったんです。

だから、伝えたんです。お客さんから売上をいただいて、店はやってるんだよ、と。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」のことも、ちゃんと言いました。雑談のときは楽しそうなのに、仕事になるとトーンが下がる。それじゃダメだよ、と。

それから、こうも言いました。

「あなたは、もっといいものを持ってるはずなんだよ。こんなもんじゃないと思う」

夜の木のテーブルに、画面を伏せたスマートフォンと湯呑みがひとつ置かれている

注意すると、泣いてしまう

そうしたら、泣き出したんです。

「なんで泣いてるの?」って聞いたら、「こういう話をされると、泣いちゃうんです」って。

実はその子、注意すると、毎回泣いてしまうんですよね。

これ、言う側も、けっこうしんどいんですよ。泣かれると、こっちが悪いことをしてるような気持ちになる。もう言うのやめようかな、って思いそうになる。

でも、僕は、そこで話を止めなかった。

泣いたからといって、言ったことを取り消したら、たぶん何も変わらないので。

最後に、二つ伝えて。

ひとつは、次の土曜日に一緒に入るスタッフを、参考にしてみて、ということ。その人の「いらっしゃいませ」のトーン、ちゃんと人に向けて言ってるところ、声の大きさ、声の張り。そういう姿勢を、見て勉強してほしい、と。必ず参考になるから、と。

もちろん、手本にされる側の子には、何も言ってません。いつも通りに働いてもらって、それを見てもらう。それだけ。

もうひとつは、好きな人にはいい対応をするけど、それ以外の人には壁を作ってる、ということ。それじゃダメだよ、と。

5日後に来た、LINE

で、その5日後の夜。

シフトの提出と一緒に、LINEが来たんですよ。

中身を、ざっくり書くと、こう。お店の方針や環境が、自分の希望する働き方と、どうしても合わないと感じることが増えた。だから、何日付けで辞めます。退職のことで、面談や話し合いは希望しません。

……正直に言いますね。

僕、これを読んで、**「ああ、もうこの人とは、一緒に働きたくないな」**って思いました。

だって、文面から、「このお店とは合いません」っていうのが、すごく強く伝わってきたので。向こうが合わないと言っているのに、こっちが無理に引き止める理由は、ないじゃないですか。

だから、引き止めませんでした。

翌日、紙にして、その日で辞めてもらった

LINEが来た次の日に、話をして。

「辞めたいってことなので、それは受け入れます。ただ、もっと早く辞めることもできるけど、どうする?」

本人の返事を聞いて、その日で辞めてもらうことにしました。

で、ここは、同じように人を雇ってる人に、ちゃんと伝えたいところなんですけど。

口約束で終わらせないで、紙にしました。

辞める日。給料は、いつも通り払うこと。ユニフォームは、クリーニングして返してもらうこと。源泉徴収票は、あとで送ること。それ以外に、お互いに請求するものはないこと。それを書いた紙を2枚用意して、店の分と本人の分、両方にサインをもらいました。

「辞めさせた」でもなく、「勝手に辞めた」でもない。お互いが納得して、区切った。 それを、あとから見ても分かる形にしておく。人を雇う側は、ここまでやっておいたほうがいいと思ってます。

最後に、今月の給与明細を渡して、「忘れ物はないよね」って確認して。「ありがとうございました」で、終わり。

がらんとしたロッカーの前に、空のハンガーがひとつ掛かっている

言いたくなくても、言わなきゃいけないことがある

実は、あの日の時点で、僕はもう考えてたんです。

もしこれで直らなかったら、「たぶん、うちの環境には合わないと思う。あなたが働きやすい場所が、きっとあるから、そっちで頑張ったほうがいい」って、言わなきゃいけないな、と。

言いたくないですよ、そんなこと。

でも、店をいい状態で保とうと思ったら、言いたくなくても、言わなきゃいけないことがある。

これはもう、本当に、嫌われ役だなって思いましたね。

結果的に、僕がそれを言う前に、向こうから言ってきた。そういうことなんだと思います。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも、書いておきます。

「泣いてる子に、厳しすぎませんか?」

そう見えるかもしれません。

でも、泣くことと、直すことは、別なんですよね。泣いたからといって注意をやめたら、その子は、ずっと同じ接客を続けることになる。それで困るのは、お客さんと、ちゃんとやってる他のスタッフです。

それに、今回も、人前では言ってません。時間を作って、仕事が終わってから、座って話してます。そこは、守ってるつもりです。

「注意しなければ、辞めなかったんじゃないですか?」

たぶん、辞めなかったと思います。

でも、言わなかったら、僕のほうが、その子をどんどん嫌いになってたはずです。前の失敗と同じで、黙って距離を取って、気づいたら終わってる。

それと比べたら、言って、向こうが「合わない」と言って、お互い納得して区切れた今回のほうが、まだ、ちゃんとしてたと思うんです。

「店の側に、直すところはなかったんですか?」

これは、まだ答えが出てません。

バイトがすぐ辞めるときの話にも書きましたけど、辞められた直後って、こっちも熱くなってるんですよ。だから、少し時間を置いてから、自分の側も振り返るつもりです。今は、正直、まだそこまでいけてなくて。

朝のラーメン店の入口で、無地ののれんを掛けようとしている手元

合わないなら、早く区切るほうが、お互いのため

まとめますね。

「いらっしゃいませ」が棒読みのスタッフに、仕事終わりに3回目の話をした。泣かれても、話は止めなかった。その5日後、「合わないので辞めます」とLINEが来て、僕は引き止めなかった。翌日、紙にして、お互い納得して区切りました。

注意すれば、辞められることもある。今回が、まさにそうで。

でも、言わずに嫌いになっていくより、言って、合わないなら合わないと分かるほうが、たぶん、お互いのためなんですよね。向こうにも、きっと、働きやすい場所がある。

熱量は、合わせない。その代わり、言うべきことは、ちゃんと言う。言ったあとのことは、ちゃんと紙にする。

嫌われ役は、店主の仕事なんだと思います。