スタッフと働く

苦手な部下との接し方——距離を取ったら辞めていった、店主の失敗談

閉店後の暗い店内。カウンターに一人だけ腰かけている後ろ姿

どうしても苦手なスタッフがいて、気づくとその人のことばかり考えてる。——そんなこと、ありません?

今日は、その苦手意識を放っておいて、対処の順番を間違えた僕の失敗談です。

今日はね、頭の容量の話をしようと思います。

100個のタスクを、全部やろうとすると

頭の中に、やることが100個あるとするじゃないですか。

それを全部、一個ずつ片づけようとするとね——たぶん、パンクしますよ。

「あれもやんなきゃ」「これもやんなきゃ」ってなって、結局一個一個の質が落ちる。

僕たちの脳の容量って、限りがあるんですよ。無限じゃないんです。

だから大事なのは、たぶんこっちなんですよね。

何をやるかより、何をやらないかを決めること。

僕が、取りに行かないもの

僕、経営者なので、判断の基準はけっこうハッキリしてて。

店の経営に関わることには、時間もお金も情報も、取りに行く。

で、逆に言うと、それ以外は取りに行かない。

たとえばね——芸能人のスキャンダルとか。誰かの浮気とか。みんなが好きそうな話題って、ありますよね。

面白いですよ、あれ。面白いんですけど、店の売上は1円も上がらないんですよ(笑)

ニュースは、まあ大事です。でも、だらだらつけっぱなしのテレビはどうなのかなあ、と思ってて。

だから僕、テレビはあんまりつけません。 見たいものだけ、録画して見る。それで十分なんですよね。

——ここまでは、自分で決められる話です。

問題はね、こっちなんですよ。

勝手に、持っていかれるものがある

苦手なスタッフがいるとね、そこにものすごいストレスを感じるんです。

で、あるとき気づいたんですよ。

そこに、脳のリソースをごっそり持っていかれてる。

これね、逆を考えると分かりやすいと思います。

好きな人ができたとき。

仕事が手につかないこと、ありませんか。頭の中の大半をその人に持っていかれてるから、目の前の作業に集中できない。

——あれとね、まったく同じことが起きるんですよ。苦手な人でも。

好きな人のことは、意識して考えてる。でも苦手な人のことは、無意識に考えちゃう。

だからタチが悪いんです。自分で選んでないのに、容量が減っていくんですよ。

だから、早めに対処する

じゃあ、どうするか。

僕なりの順番があってね。

① まず、本人と話す

これが第一です。必ず、ここから。

② それでもダメなら、役割を変える

合わない場所にいるだけ、ってこともあるので。

③ 距離を取る

——実はこれね、まだ早いんです。 あとで書きます。

④ 辞めてもらう

最終手段です。 ここから始める人はいないと思いますけど、念のため。

厨房で、二人が距離をあけて別々の作業をしている

「距離を取る」は、対処じゃないんですよ

さっき「まだ早い」って書いた理由を、ちゃんと説明させてください。

距離を取るとね、その人と話すことさえイヤになるんですよ。

でも飲食店って、話さないわけにいかないじゃないですか。仕事は回さなきゃいけないので。

つまりどうなるか。

話したくない相手と、話さなきゃいけない。 これね、ものすごいストレスがかかるんです。

——気づきました?

リソースを節約するつもりで距離を取ったのに、もっと食われてるんですよ。

だから距離を取るのは、対処じゃないんです。悪化です。

で、それをやったのが、僕なんですけど

正直に書きますね。

僕は、それを怠りました。

早めに話すことをしないで、そのうち「もう、いいや」って諦めちゃったんです。

そこからどうなったか。

その人とは、仕事の会話だけになりました。 プライベートな話は、一切しない。

そうやってね、お互いに距離を取ったんですよ。

——その日のことは、別の記事に書いてあります。正直、みっともないことも書きました。読まなくてもいい話ですけど、置いておきますね。

→ 「もう、いいや」と思った日——僕が、ひとりのスタッフを諦めた話

社長が距離を取ったことは、伝わります

ここがね、いちばん書いておきたいところなんです。

スタッフって、社長が距離を取ったことに気づくんですよ。

言葉にしなくても、伝わる。あの人にだけ話しかけない。あの人とだけ雑談がない。——そういうのは、必ず伝わります。

そして、その人は辞めていきました。

辞めさせたわけじゃないんですよ。 一度もそんなことは言ってない。でも、結果として辞めていった。

……これね、僕がやったのと同じことだと思ってます。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも書いておきます。

「合わない人と、無理に仲良くする必要あります?」

——ありません。 仲良くなる必要なんて、まったくないです。

僕が言ってるのは、普通に話せる状態を保つってことだけで。友達になれって話じゃないんですよ。

でもね、普通に話せないと、仕事が回らない。 そこが飲食店のつらいところなんですよね。

「苦手だと思ってること自体が、店主の問題では?」

……これは、痛いところ突かれました。そのとおりだと思います。

たぶん向こうも、僕のことを苦手だったはずなんですよ。苦手って、片方だけってことはあんまりないですから。

だからこれは「困ったスタッフの話」じゃなくて、**「僕が苦手意識を放置した話」**なんです。そこは、はっきりさせておきますね。

「話して、こじれたらどうするんですか」

うーん。こじれることは、ありますよ。

でもね、放っておいてもこじれるんですよ。しかも時間が経ってからこじれるほうが、直しにくい。

小さいうちに話せば「気になってることがあってさ」で済む話が、半年経つと「ずっと我慢してた」になるんです。同じ内容なのに、重さが変わっちゃう。

壁に、使い込まれた前掛けが一枚だけ掛かっている

小さな芽のうちに

まとめますね。

僕たちの頭の容量は、有限です。

だから何をやらないかを決める。テレビを消す。芸能人のスキャンダルを追わない。——そこまでは、自分で守れます。

でもね、苦手な人だけは、勝手に入り込んでくるんですよ。無意識に考えちゃうから、防ぎようがない。

だから早めに対処するしかないんです。

放っておくとね、その小さな芽は、どんどん育ちます。

僕の場合、育ちきってから気づきました。気づいたときにはもう、「もう、いいや」になってて。

あのとき、めんどくさがらずに一回話しておけばよかったな。

今でも、そう思ってます。

同じように「あの人、ちょっと苦手だなあ」と思ってる方がいたら、ひとつだけ。

それ、まだ小さいうちですか?

小さいうちなら、話すだけで終わります。育ってからだと、そうはいかないので。


追記。

そのあとね、そもそも自分は何が苦手だったのかを考えてみたんです。それも書きました。

→ 現状維持を好むスタッフの見分け方——返事より、歩き出しの速さを見る