土曜日に店を閉めて、同窓会に行きました——売上と思い出を、天秤にかけた話

夕方、のれんを下ろして閉店したラーメン店の外観

今日は、仕事というより人生観の話です。ちょっと腰を据えて、聞いてもらえたらうれしいです。

土曜日に、店を閉めました

同窓会がありました。土曜日です。

——飲食店の方なら、この時点で「うっ」となると思います。土曜日って、いちばん売上が取れる日なんですよ。

しかもうちの場合、僕が抜けたら店が回りません。僕の手が止まると、営業ができない。 だから「休む」っていうのは、そのまま「稼がない」とイコールなんです。

結局、お昼だけ営業して、店を閉めました。

最初は、行く予定じゃなかったんです

正直に書きますね。話をもらった当初、僕は参加する予定じゃなかったんですよ。

理由は単純で、売上を取りたかったから。 稼げる期間なんだから、そこはちゃんと営業しないとな、と思ってた。

……で、ここからが今日の本題です。

天秤にかけました

僕は、この2つを天秤にかけたんです。

片方に、数万円の売上。 もう片方に、思い出。

小学校、中学校が一緒だった仲間に会って、久しぶりに話す。普段はまったく会えない人たち。——それを、天秤のもう片方に載せた。

そして僕は、思い出のほうを取りました。

夜の居酒屋のテーブル。グラスが並び、乾杯が終わったあとの賑やかな気配

なんで、思い出を取ったか

理由が、ふたつあります。

① 80歳の自分から見たら、どっちが良かったか

僕が80歳くらいになったとき、どういう人生だったと思うか。想像してみたんですよ。

仕事だけの人生だったのと、いい思い出がたくさんあった人生と。

——たぶん、後者のほうが、人生に色が出ると思ったんです。

80歳の自分が「あの土曜日、数万円稼げてよかったな」って思うかというと、たぶん思わない。でも「あのとき同窓会に行ったな」は、覚えてる気がするんですよ。

② 思い出は、何度も味わえる

これがね、僕の中でいちばん大きかった理由です。

思い出っていうのは、何度も味わえるんですよ。

時が経っても、そうなんです。「中学のときにさ、あれあったよな」って、また友達と笑える。10年後にも、20年後にも、同じ話でまた笑える。

でも、売上は一度きりなんですよね。稼いだ数万円は、使ったら消える。もちろん大事ですよ。でも、20年後にもう一回味わえるかというと、そういうものじゃない。

一度きりのものと、何度も引き出せるもの。 そう並べたら、答えが出ました。

40代って、そういう時期なんです

もうひとつ、正直に書きます。

40代になってくるとね、いよいよ人生の後半に差しかかってるっていうのが、分かるんですよ。

白髪が増えてくる。顔がちょっとたるんでくる。——そういう体の変化で、気づかされるんです。

**「あ、自分の人生って、永遠じゃないんだな」**って。

これ、20代のときには一ミリも思わなかったことです。頭では知ってましたよ。でも、本当に「気づき始める」のは、この時期なんですよね。

だから僕は、その時間を大切にしたいなと思ったんです。

ちなみに、この「残り時間の中で、どう働くか」を考えてたころに、僕が実際に読んだ本です。気になった方はどうぞ。

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……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも書いておきます。

「毎回それやってたら、店が潰れますよね?」

——そのとおりです。毎回はやりません。

だからこそ「天秤にかけた」って書いたんですよ。天秤にかけるってことは、毎回は乗せないってことです。同窓会は、そんなに頻繁にあるものじゃない。次にいつ、あのメンバーが揃うかも分からない。

売上は、来週も取れる。でも、あの日の同窓会は、あの日しかない。 ——取り返せるほうを手放した、というだけの話です。

「スタッフに任せて、営業できないんですか?」

……これは、痛いところを突かれました。

そのとおりなんです。 僕が抜けたら店が回らないっていうのは、裏を返せば店の弱点でもあるんですよ。仕組み化ができてない、ということでもある。

これは、素直に僕の宿題です。「休む=売上ゼロ」という構造は、いつか変えなきゃいけない。今日は、その課題を抱えたまま店を閉めた、というのが正確なところです。

「思い出のために売上を捨てる、って、きれいごとじゃないですか?」

うーん、そう聞こえるかもしれません。でも、数万円って、僕にとってはけっこうな額なんですよ。前に「10円が3,000人で3万円になる」って記事を書いたくらい、僕は数字にうるさい人間です。

だから、痛くなかったわけじゃない。痛いと分かったうえで、そっちを選んだっていう話です。

夜道を歩いて帰る、一人の後ろ姿

数字で計算できないほうを、選びました

まとめます。

僕は、けっこう数字で考えるほうです。原価率、客単価、掛け算。このブログでも、さんざん書いてきました。

でも今回は、数字で計算できないほうを選びました。

思い出には、値段がつかない。だから天秤の片方には、数字が乗らないんですよ。乗るのは「たぶん、こっちのほうが後悔しない」っていう、それだけ。

でも——たぶん、それでよかったんだと思います。

時間だけは、増やせないんですよね。 お金は稼げば増える。でも、40代の土曜日は、二度と来ない。

同じように迷ってる方がいたら、ひとつだけ言わせてください。その予定、取り返しがつきますか? それだけ考えてみると、けっこう答えが出ますよ。


この話は、歌にもなっています

また あの戸を 開けよう — 40歳の同級会 実話ソング

YouTubeで聴く:「また あの戸を 開けよう」— 現場のうた