スタッフと働く

バイトは暇な方がいい?——「今日は忙しそう」とこぼしたスタッフに、店主が笑って飲み込んだ本音

昼どき、ラーメン店の入口の外に、順番を待つ人たちの足元が並んでいる

今日、祝日だったんですよ。

で、スタッフが、ぼそっと言ったんです。

「今日、なんか忙しそうな気がする……。不安的中だ」

僕、それを聞いて、笑っただけでした。

でも、心の中では、こう思ってたんですよね。

いや、忙しくなってもらわなきゃ、困るんだよ。

店は、忙しくなきゃ困る

当たり前の話なんですけどね。

店って、忙しくないとダメなんです。お客さんが来て、ラーメンが売れて、その売上から、材料を買って、家賃を払って、スタッフの給料を払ってる。

ラーメン屋の売上とお金の流れは前に全部書きましたけど、暇な日が続いたら、真っ先に苦しくなるのは、そこなんですよ。

だから、店主からすると、忙しい日はありがたい日なんです。

でも、スタッフからすると、忙しい日は「不安的中」の日。

この温度の差で、ちょっと見えてきたことがあったんです。

「暇な方がいい」は、ある意味、自然

先に言っておくと、スタッフの気持ちも、分かるんですよ。

時給は、暇な日も忙しい日も同じ。だったら、暇な方が楽で得じゃん。働く側から見たら、ある意味、自然な考え方だと思います。

ただ、店主として、ひとつだけ言いたいことがあって。

忙しいから、給料が払えるんだよね。

もし毎日が暇だったら、そもそも、あなたを雇う必要がないんです。時給を上げる必要も、ない。

……まあ、それを本人に言うかどうかは、また別の話なんですけどね(笑)。でも、正直、そう思ってます。

忙しい営業を終えた洗い場に、使い終わった丼が高く積まれている

忙しい方がいい人と、暇な方がいい人は、ここが違う

で、ここからが、今日いちばん書きたかったことです。

これまで、いろんなスタッフを見てきました。その中で、「売上を取ろう」としているスタッフ、つまり忙しい方がいいって思えるスタッフと、暇な方がいいスタッフ。見ていると、はっきり違うところがあるんです。

見えるところ 忙しい方がいい人 暇な方がいい人
忙しいときの顔 嫌そうに働いてない どこか乗り気じゃない
忙しさが終わったあと やりきったような表情 「疲れた」「大変だった」
そのあとの一言 「あそこ、こうでしたね」「あのお客さん、こうでしたね」 (振り返りは、あまり出てこない)

いちばん大きいのは、三つ目なんですよ。

忙しい方がいい人は、忙しかった時間を、振り返るんです。

「あそこで、こうでしたね」「あのお客さん、こうでしたね」って。終わったあとに、自分から話してくる。

これ、何をしてるかというと、忙しかった時間を、ただの「疲れた時間」で終わらせてないんですよね。次に活かす材料にしてる。だから、忙しい日を通るたびに、その人は一段ずつ上がっていく。

逆に、暇な方がいい人は、「疲れた」「大変だった」で終わる。忙しかった時間が、ただの疲れとして残るだけ。

同じ時間を働いても、そこから持って帰るものが、まるで違うんです。

伸びるのは、仕事だけじゃない

もうひとつ、見ていて思うことがあります。

売上を取るぞ、っていう熱意がある人は、仕事ができるようになるだけじゃなくて、人として伸びていくんですよ。人間力、って言えばいいのかな。

お客さんのことを見るようになる。周りのスタッフのことも見るようになる。自分がどう動けば店が回るかを、考えるようになる。それって、店の外でもそのまま使える力なんですよね。

長く続く人は、最初の1週間で「待たない」と前に書きましたけど、根っこは同じだと思います。

一方で、暇な方がいいとか、暇だと助かるとか、そういう声が出る人。この人たちも、やることは、それなりにやってくれるんです。 サボるわけじゃない。

でも、乗り気じゃない、っていうのが、すごく伝わってくる。

そして、正直に言うと、伸び方が違う。

忙しい営業を終えた厨房のカウンターに、湯気の立つ湯呑みが二つ並んでいる

そういう人と働く方が、楽しい

それに、これは店主の本音なんですけど。

忙しい方がいいって言える人と働く方が、僕はめっちゃ楽しいし、心地いいんです。

忙しい日を一緒に乗り越えて、終わったあとに「あそこ、こうでしたね」って話せる。そういう人と働く時間は、本当に心地いいんですよね。

熱量は、できない人に合わせないって書いたことがありますけど、裏を返せば、熱量のある人と一緒にいると、こっちの熱量も上がるんです。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも、書いておきます。

「それって、店主の都合じゃないですか?」

はい、店主の都合でもあります(笑)。忙しい方が、店は助かるので。

でも、それだけじゃないんですよ。さっきの表の三つ目、「振り返り」。あれは、店のためというより、その人自身のためなんです。忙しい時間を振り返れる人は、どこへ行っても伸びていく。それは、店主の都合とは関係なく、本当にそう思ってます。

「暇な方がいいと思うのは、ダメなことなんですか?」

ダメとまでは言わないです。人それぞれ、働く理由も違うので。

ただ、「忙しいのは嫌だ」と思ったまま働くのは、たぶん、本人がいちばんしんどいんですよね。同じ忙しさが来るなら、嫌々通るより、振り返れる方が、得だと思うんです。

「じゃあ、そのスタッフに言えばいいのに」

それが、言ってないんですよ。今回は、笑っただけ。

言うかどうかは、正直、まだ決めてません。

夕方、きれいに拭き上げられたラーメン店のカウンター。次の営業を待つ静かな店内

忙しさを喜べる人は、伸びていく

まとめますね。

祝日、スタッフがこぼした「今日は忙しそう、不安的中」。時給が同じなら、暇な方がいい。その気持ちは、分かります。

でも、店は忙しくないと給料が払えない。そして、いろんなスタッフを見てきて思うのは、忙しい方がいいと言える人は、仕事でも、人としても伸びていくということです。

違いが出るのは、忙しさが終わったあと。「疲れた」で終わるか、「あそこ、こうでしたね」と振り返るか。

忙しさを喜べる人と働くのは、やっぱり、楽しいです。