スタッフと働く

バイトの辞め方、店長は本当はどこを見ているか——ドアの閉め方まで、覚えています

ラーメン店の入口を内側から見た景色。閉まったばかりの木の引き戸に、外の光がぼんやり映っている

以前、辞めた人がユニフォームを返しに来たことがあって。

小さい声で、何か言いながら、ユニフォームをぽんと前に出して。何を言ってるのか、正直ほとんど聞き取れなかったんですけど、まあユニフォームのことだな、と思って受け取りました。

で、帰り。

ドアを、バタンって閉めて帰っていったんですよ。

普通、閉めるときって、ゆっくり閉めるじゃないですか。それが、バタン。僕、そのとき思ったんです。ああ、ここに出るんだな、って。

地方で小さなラーメン屋をやっている店主です。今日は「バイトの辞め方」の話を、店長の側から、本音で書きますね。ネットで調べると「1か月前に伝えましょう」「直接言いましょう」っていうマナーの記事はたくさん出てくるんですけど、店長が実際どこを見てるのかを書いたものって、あんまりないなと思って。

店長は、辞め方をぜんぶ覚えてます

先に言っちゃいますね。

人ってね、去り際に本性が出る、と思ってるんですよ。

働いてるあいだって、みんなそれなりに気をつけてるじゃないですか。店長の前だし、お客さんの前だし。でも、辞めるって決めたあとは、もう気をつける理由がない。油断する。その油断したときに、その人が本当に思ってることが、ぽろっと出やすいんです。

だから、ドアの閉め方ひとつでも、店長は覚えてます。たぶん、何年たっても。

きれいな辞め方は、拍子抜けするほどシンプル

じゃあ、きれいな辞め方ってどういうのか。

これがね、拍子抜けするくらいシンプルなんですよ。

学生さんなら、卒業までやりきる。それだけです。で、辞めたあとに、ちゃんと「ありがとうございました」って言いに来てくれる。

学生さん以外なら、この3つですね。

1か月くらい前に、辞めるとはっきり言う。ユニフォームをちゃんと返す。辞める日まで、店に迷惑がかからないように、できるだけ出勤する。

……特別なこと、何もないでしょ?

でも、これをちゃんとやれる人って、働いてるときからちゃんとしてるんですよね。辞め方だけきれい、っていう人は、あんまりいないです。

出勤3分前の「休みます」

反対に、きつかった辞め方の話もしますね。

いちばん困るのは、連絡がつかなくなる人です。

出勤の3分前に「休みます」って連絡が来たりする。いや、3分前って、もう家を出てなきゃいけない時間じゃん、と(笑)。で、こっちから連絡しても、既読がついたまま返事がない。そういう人は、だいたいユニフォームも返ってきません。

その人が来なかった日、店はどうなってるか。

別のスタッフが、穴を埋めてます。

休みのはずだった人が出てきてくれたり、もともといた人が長く残ってくれたり。辞める本人からは見えないところで、誰かが代わりに走ってるんですよ。(いちばん早く連絡が取れなくなった人の話は、バイトがすぐ辞める、その対策にも書きました)

ラーメン店の厨房の作業台に、きれいにたたまれた黒いTシャツと前掛けが置かれている

「辞めます」と言われた瞬間の、店長の本音

ここ、たぶん辞める側の人がいちばん知りたいところだと思うので、正直に書きますね。

「辞めます」と言われた瞬間の気持ちは、人によって、まったく違います。

「辞めます」と言われたとき どんな人か
正直、ホッとする 言ったことを全然やれない人。注意すると、ふてくされる人
惜しいな、と思う まじめに働いて、店のために頑張ってくれた人

ホッとする、って、ひどく聞こえるかもしれません。でもね、辞めさせるのって、けっこうエネルギーがいるんですよ。 何度も同じことを言って、記録をつけて、話し合いの場を作って。それを向こうから「辞めます」と言ってくれたら、正直、肩の荷が下りるんです。その人が出勤してこないだけで、心がだいぶ穏やかになる。……店長も人間なので。

逆に、まじめに頑張ってくれた人に辞めると言われたら、惜しいです。それは当然ですよね。

で、ここが大事なところなんですけど。

ホッとされるか、惜しまれるか。その差は、辞め方より前、働いているあいだに、もう決まってます。

辞めるときに急にいい顔をしても、店長の中の評価は、そう簡単には変わらないんです。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

「それって、店の都合でしょ?」

「合わない店なら、さっさと辞めたほうがいいじゃん」

うん。それは、その通りだと思います。

合わない店で無理して続ける必要はないし、辞めること自体は、何も悪くないです。僕の考えが全部正解だとも思ってないし、辞める人には辞める人の正義みたいなものがあるのも、分かってます。

ただね。辞める理由が、自分が仕事をできなかったからなのか、それとも、言われたことにただ反発して辞めたいのか。そこで話は変わってくるんですよ。

店から「これをやってほしい」と言われて、それができていないなら、それはやっぱり本人の責任です。店に入った以上、やってほしいと言われたことはやらなきゃいけない。それで、ふてくされてしまったら、「何しに来たんだ、なんで入ったんだ」ってなっちゃいますよね。

ここ、学校じゃないので。 自分のやりたいようにやっていい場所じゃないんです。

辞めるなら、結果を出してから

だから、もし僕が、辞めようか迷っている人に一つだけお願いするなら、これです。

結果を出してから、辞めてください。

できないまま辞めると、「あいつ、やっぱり何もできなかったな。どこへ行ってもダメだろうな」と思われちゃいます。まあ、そう思われてもいいなら、いいんですけどね。

でも、もったいないと思うんですよね。せっかくその店で時間を使ったなら、「あの人、ちゃんとやってから辞めていったな」と思われて終わったほうが、絶対に得なので。

きれいに辞めた人は、また食べに来る

最後に、きれいに辞めた人の、その後の話をしますね。

きれいに辞めた人って、また食べに来るんですよ。 友達を連れてきてくれたりもする。辞めたあとも、店との関係が続いていくんです。

逆に、変な辞め方をした人とは、そこで縁が切れます。

で、そういう人は、たぶん次の職場でも、その次の職場でも、同じように縁を切っていくんですよね。そうすると、何も次につながらない。人の資産として、何も残らないんです。

辞めるたびに、人とのつながりが増えるどころか、減っていく。自分で、自分の生き方を狭めていってる。……これ、辞める本人がいちばん損してるんですよ。そこに、まず気づいてほしいなと思います。

バイトを辞めようか迷っている人へ

まとめますね。

辞めるのは、悪いことじゃないです。ただ、辞め方は、店長がずっと覚えてます。

1か月くらい前に言う。ユニフォームを返す。最後まで、できるだけ出勤する。できれば、結果を出してから辞める。それだけで、「惜しい人が辞めた」と思ってもらえます。

そして、辞めたあと、ふらっと食べに来てください。店長は、たぶん、すごくうれしいので。

人は、去り際に本性が出ます。ドアは、ゆっくり閉めていきましょう。

窓に面したカウンターで、ラーメンを食べるお客さんたちの後ろ姿