「許してあげてね」に、何も言えなかった——シフト締切と、経営者の席から見える景色
2026-09-18

今日はね、経営者として悔しかった話をします。
何が悔しいって、言われたことにじゃないんです。違和感があったのに、その場で言葉にできなかったことが、悔しい。
ことの顛末から。
締切に、3回遅れた
うちのシフトはLINEで管理してて。「この日の12時までに、出勤希望を出してください」——締切を決めて、募る形です。
その締切にね、遅れたスタッフがいたんですよ。しかも3回目。1回目と2回目は、もう個別に注意してあって。で、3回目。全体LINEで言いました。「時間が過ぎてるので、ちゃんとしてください」って。
それが、1ヶ月くらい前の話。
「許してあげてね」
で、今日。主婦のスタッフに、こう言われたんですよ。
「あの子ね、あの後聞いたんですけど——みんなの出勤希望が出そろってから、みんなが出れない日に自分が入ろうと思って、ギリギリまで待ってたんですって。で、途中で寝落ちしちゃったって。お店のためにやってくれたんだから、みんなの前で言っちゃったのは……ね、許してあげてね。もったいないよ」
……僕の返事は、「なるほどね」。それだけ。
違和感は、あったんですよ。確かにあった。でも、その場でうまく言葉にできなかった。
で、仕事中にやっと言語化できたので、いつもの通り、夜のここで言わせてもらいます。あのとき言えなかった言葉の、答え合わせです。
先に言っておくと、あの人の優しさは正しい
最初に、これだけははっきり書いておきますね。
あの主婦さんは、間違ったことを言ってないんですよ。仲間をかばう優しさとしては、100点なんです。それに、遅れた本人の動機——みんなが出れない日に入ろうとした——これ、ありがたい話で。そこは本当に。
じゃあ何が引っかかったのか。
前に書きましたけど、座ってる席が違うと、見えるものが違うんですよ。あの人はスタッフの席から、一人の仲間を見てた。僕は経営者の席から、店の全体を見てた。——ここから書くのは、経営者の席から見えた3つです。
違和感①:一人で見ると美談、全体で見ると不公平
まず、一人だけを見れば、これは美談なんですよ。お店のために待ってて、寝落ちしちゃった。かわいいもんです。
でも、全体で見てください。締切を守った人たちが、いるんですよ。
眠くても、忙しくても、12時までに出した人たち。その人たちから見たら「なんであの人はよくて、私たちは守ったの?」ってなるじゃないですか。ルールを守った人が損した気分になる店——これ、いちばんまずいやつです。
それに、一度曖昧にしたら、線は動き続けます。5分過ぎても大丈夫。じゃあ10分。じゃあ1時間。最悪、翌朝。——その間ずっと、こっちは連絡を待ち続けなきゃいけないんですよ。
違和感②:シフト管理に、コストはかけられない
主婦さんは、こうも言ってました。「12時までって言うけど、12時に受け取って、すぐ作業を始めるわけじゃないでしょ?」って。
一見、正論に聞こえるでしょ? でもね、これも違うんですよ。
店の経営のなかで、シフト管理って全体の1割くらいの仕事なんですよ。にもかかわらず、ここを曖昧にすると、管理の手間だけが際限なく膨らんでいく。
学校の先生を思い出してほしいんです。「提出物は5時まで。5時を過ぎたら受け取りません」っていう先生、いたじゃないですか。あれ、意地悪じゃないんですよ。先生は何クラスも見てて、100人以上の提出物を扱ってる。締切を曖昧にしたら、5時10分に来る子、5時半に来る子、翌日に来る子——一人ずつ、際限なく対応し続けることになる。で、先生の仕事は提出物の回収だけじゃない。山ほどある仕事の、ほんの一部でしかない。
だから、線を引くんです。(先生、あのときの5時締切の意味、今なら分かります)
うちも同じでね、昔は一人一人にLINEを送ってたんですよ。でも管理コストがかかりすぎるから、全体LINEの締切制にまとめた。その締切が破られたら、まとめた意味がなくなるんです。
違和感③:ルールは、ちょっとずつ破られる
三つ目は、未来の話。
ルールってね、一気には破られないんですよ。最初に教えたやり方が、1年後には全く別のやり方になってた——よくある話でしょ? あれ、誰かが大胆に破ったんじゃないんです。
みんなが気づかないくらい小さく、ちょっとずつ。線を踏んで、はみ出して、片足が出て、両足が出て。「これがいいんだったら、まあ、これもいいか」——そうやって、少しずつ破られていく。
嫌いが芽から咲くのと同じで、ルールの崩れも、芽のうちに摘むしかないんですよ。だから、どこかで線引きをしないといけない。3回目の全体LINEは、僕にとってその線でした。

そして、いちばん言いたかったこと
最後に、あの場でいちばん言おうとして、言えなかったことを書きますね。
もし遅れた本人が「お店のために動いてたのに、注意されて、なんだよ」っていう気分になってるんだとしたら——俺は、そういう人とは働きたくない。
きつい言い方に聞こえるかもしれないけど、理由ははっきりしてて。それ、他責じゃないですか。
寝落ちしたのは、自分ですよ。動機がどれだけ良くても、ルールの上での行動じゃないと意味がない。で、注意されたときの正解はね、「なんだよ」じゃなくて——
「寝落ちしちゃったのは悪かった。今度は目覚ましを2個かけよう」
これなんですよ。動機の良さは、結果の言い訳には使えない。そこを混ぜちゃうと、人は成長が止まるので。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも書いておきます。
「で、注意のせいで出勤希望が減ったんですよね?」
主婦さんはそう見てて。で、正直に書くと——確かに、ちょっと減ってます。
ただ、その時期はお盆やら何やらと重なってたりもして、注意のせいなのかは、正直、分かりません。 最近はこっちからお願いすると、けっこう出てくれてますし。分からないことを「注意のせいだ」とも「関係ない」とも断定しないでおきます。ここは観察を続けます。
「その話、主婦さん本人にはしないんですか?」
しません。今更なので。「あの人はそう思うのか」でいいんです。
ただ、今回言語化できたことで、次に同じ場面が来たら、その場で言えます。 そのためにこれを書きました。悔しさの回収は、次の一回でやります。
「3回目でも、事情を聞いてから注意すべきでは?」
順番は踏んでるんですよ。1回目、2回目は個別に注意して、うちのやり方はこうだからね、って何回か言う——それでも3回目が来たから、全体への線引きに切り替えた。いきなり全体の前で言ったわけじゃないんです。
それでもね、「全体LINEの前に、もう一回だけ個別で聞く手はなかったか」って言われたら——そこは、考える余地があったかもしれません。そこも正直に書いておきます。

言えなかった言葉は、ここで言う
まとめますね。
優しさと、線引きは、両立します。あの主婦さんの優しさは正しい。でも、経営者の席からは別のものが見えてて、ルールの線は、誰かが引き続けないと消えていくんです。
その場で言えなかったのは、悔しい。でも、言えなかったことは、夜、ここで言葉にする——って決めてるので。
この記事が、あの日の「なるほどね」の、続きです。