「派閥って、大人にもあるんだよ」——学園祭でクラスが揉めた話を、スタッフから聞いた日

営業後の静かなカウンター、片付けの手元

今日はね、雑談の話です。

営業がひと段落したとき、学生のスタッフが、ぽろっと話してくれたことがあって。それが妙に頭に残ったので、書いておきます。ちょっと雑な話なんですけどね。

「学園祭、何やるかで揉めてるんですよ」

もうすぐ学園祭があるらしくて。で、クラスで出し物を決めるのに、揉めてると。

揉める理由を聞いたら、これがね、出し物の中身じゃないんですよ。

うちのスタッフは、いつも5人組で仲良くしてる。で、クラスには別の6人組がいる。その5人組の一人と、6人組の一人が、仲が悪い。

ここまでは、まあ、よくある話じゃないですか。人が集まれば、合わない二人くらい、いますよね。

問題は、ここからです。その二人が、周りを巻き込んじゃったんですよ。5人組 対 6人組、みたいな形になっちゃって。だからクラスで何か決めるたびに、ピリピリするんですって。学園祭の出し物を決めるだけなのに。

「二人で勝手にやってよ」

僕、それ聞いて、思わず言っちゃって。

**「いや、それさ、お互い一対一で、適当にやってよ」**って。

だって、他の人は関係ないんですよ。仲が悪いのは、その二人。二人がしゃべらなければ済む話なんです。それを、自分の仲間を味方につけて、相手の仲間ごと敵にして——関係ない人まで、ピリピリさせてる

周りを巻き込んで、そういうのやるの、やめたほうがいいよねって。

夕方の教室、机が並んでいて誰もいない

でもね、それ、大人にもあるんだよ

……って言ってから、ちょっと考えたんですよね。

これ、大人の世界にも、ふつうにあるんですよ。会社にもある。

こういうの、派閥っていうんだよって、その子に話しました。

派閥に入るとね、「お前はどっちにつくんだ」って言われるんです。最初は、何のことか分からないじゃないですか。入ったばっかりで、誰が誰と仲が悪いかなんて、知らないので。

で、分からないから、どっちにもつかない。そうすると、どうなるか。全然、相手にされないんですよ。仕事も振ってもらえない。意地悪されたりもする。

「あー、そうなんですね」って、その子は言ってました。ちょっと、びっくりした顔でした。

そりゃそうですよね。学園祭の話をしてたのに、いきなり会社の話になったので。

でも僕、ここは伝えておきたかったんです。クラスで起きてることは、クラスの外にもある。 大人になったら消えるものじゃなくて、形を変えて、ずっとある。だから今のうちに、それを「そういうものか」って知っておくのは、悪くないと思ってて。

「いろんな人がいる」を、経験してほしい

で、最後に伝えたのが、これです。

「クラスにさ、いろんな人いるじゃん。そういうクラスの中で、それを全部経験して、立派な大人になってほしい」

世の中には、意地悪する人も、いじめる人も、不親切な人も、新人をいじめる人も、います。これはもう、いる。いなくなりません。

でも、あなたはそっち側じゃなくて——「あなたみたいになりたいです」って言われる大人になってね、って。「あなたのおかげで助かりました」って言われる大人になってね、って。

あなただったら、きっとできるから。大丈夫。

厨房で丁寧に器を拭く若い手元

なんで「大丈夫」って言えたのか

これ、根拠なく言ったわけじゃないんですよ。

僕、その子の仕事を、毎日見てるので。

すごい真剣に取り組んでるんです。言葉遣いも丁寧で。「はい」に熱があるかどうかって以前書きましたけど、ちゃんと熱があるほうの返事をする子なんですよね。

仕事って、その人の人柄が出るんですよ。厨房でも、洗い場でも、お客さんへの一言でも。取り繕っても、出ちゃうんです。

だから僕は、それを見た上で、「あなたは大丈夫」って言いました。変な人たち——変って言うと、ちょっと悪いんですけど——そういう人たちを見て、反面教師にして、立派な大人になってほしいと思ってます。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも書いておきます。

「学生の揉め事に、店長が口出しすぎでは?」

そうかもしれません。ただ、僕は解決しようとはしてないんですよ。5人組と6人組の話を、僕が裁くことはできないので。

やったのは、「それ、大人の世界にもあるよ」って、地図を一枚渡しただけです。今いる場所が、地図のどこなのか。それが分かるだけで、ちょっと楽になることってあるじゃないですか。

「派閥なんて言葉、学生に聞かせてどうするんですか」

うーん、でも、知らないまま社会に出て、いきなり「どっちにつくんだ」って言われるほうが、きついと思うんですよね。僕は、それで最初、けっこう戸惑ったので。

「会社は、学校じゃないんだよ」って、新人の初日に言ってるんですけど、それの逆で——学校にも、会社っぽいところがある。それを先に言っておくのも、うちで働いてくれてる子への、ちょっとした仕込みだと思ってます。

「で、その子の学園祭、どうなったんですか」

まだ、聞いてません(笑)。決まったら、また雑談の中で教えてくれると思います。雑談は、覚えててこそなので、僕もちゃんと覚えておきます。

店の外、夕暮れの空と裏口の灯り

雑談の中に、いちばん大事な話がある

まとめますね。

学園祭でクラスが揉めてる、という雑談から始まって。5人組と6人組の話になって。それ、大人の世界では派閥っていうんだよ、という話になって。最後に、立派な大人になってね、で終わりました。

ラーメン屋の営業後の、ほんの数分の話です。

でもね、こういう話って、会議とか面談では出てこないんですよ。雑談だから、出てくる。 そして雑談だから、こっちも本音で返せる。

うちの店で働いてくれてる間に、僕が渡せるものって、時給と、賄いと——こういう、ちょっとした地図くらいなんですよね。それでいいと思ってます。