「両替、お願いします」を、33万円で消しました——手間を消すための設備投資の話

券売機の横に置かれた両替機、閉店後の静かな店内

今日はね、設備投資の話をします。といっても、大げさなやつじゃなくて。両替機の話です。

うちの店で、たぶんいちばん地味なお金の使い方だったんですけど、いま振り返ると、いちばん「やってよかった」と思ってる買い物なんですよね。

券売機は、千円札しか受け付けない

まず前提から。うちの店は券売機なんですけど、券売機って、千円札しか入らないんですよ。一万円札も、五千円札も、ダメ。

で、どうなるかというと。

「すみません、一万円、両替してもらえますか」

こう言われるわけです。最初のころは、僕がレジから千円札を10枚出して、一万円札と交換してました。それしかやりようがないので。

これがね、1日に10回から15回あるんですよ。

盛り付けの途中で、呼ばれる

回数だけ聞くと、たいしたことないように思うかもしれないんですけど。問題は、呼ばれるタイミングなんです。

盛り付けしてる最中。接客してる最中。麺を上げる、その直前。そういうときに、「すみません、両替を」って来るんですよ。

で、こっちは手を止めて、レジに行って、千円札を数えて。嫌な顔は、できないじゃないですか。お客さんは、何も悪くないので。

でもね、正直に言うと——誰でも嫌だと思うんですよ、あれ。 気を使うし。1回1回は小さいんだけど、10回、15回と積み重なると、スタッフの体力っていうより、気力を削るんですよね。

盛り付けの途中、湯気の上がる厨房の手元

開店してすぐ、中古の両替機を入れた

だから僕は、開店してわりとすぐに、両替機を買いました。

新品じゃなくて、中古です。業務用の機械を専門に扱ってる業者さんから、本体と架台で、税込33万円くらい。それを券売機の横に置いた。

迷ったかって、よく聞かれるんですけど——迷ってないんですよね。

だって、考えてたことが一つしかなかったので。「両替お願いします」っていうあの負担を、あのストレスを、消すには何ができるか。それだけ。そこに33万円で答えが買えるなら、僕は払う。

で、置いたら。

両替で呼ばれることが、なくなりました。 ゼロです。お客さんは自分で両替して、千円札で券売機に入れて、席に着く。スタッフは盛り付けから手を離さなくていい。

33万円で、あの「すみません、両替を」が、丸ごと消えたんですよ。これ、すごい大成功だったと思ってます(自分で言うのもなんですけど)。

新紙幣が出る、半年前に

話はこれで終わりじゃなくて。

2024年に、新紙幣が出たじゃないですか。あれ、うちみたいな店にとっては、けっこうな事件で。券売機も両替機も、紙幣を読む部分(ユニット)を交換しないと、新しいお札が使えないんですよ。

で、うちの両替機、古い型なんですね。20年以上使われてる定番の機械なんですけど、メーカーさんに聞いたら、「その機種の部品交換は、もうやってません。新しく買うなら、新型を」と。

新型の値段を見たら——中古でも77万円でした。新品はもっとする。

いや、無理でしょ、と。

で、探したんですよ。そしたら、古い機種向けの新紙幣対応ユニットを、独自に扱ってる業者さんがあって。税込で22万円くらい。券売機のほうも、同じ業者さんで9万円弱。

僕、これを、新紙幣が発行される半年前に、全部終わらせました。

みんな、引っ張るんですよ

こういうのってね、みんな引っ張るんです。金額が高いので。「まだ大丈夫でしょ」「発行されてからでいいでしょ」って。

でも僕は、どうせやらなきゃいけないものなんだから、さっさと変えちゃおう、と。それだけです。先に払うか、後で払うかの違いしかない。だったら、慌てない側に立ちたい。

実際、僕の周りで引っ張った店は、どうなったか。

今も、「新紙幣は使えません」の貼り紙のままです。 発行から2年以上たって、まだ。

僕、そのお店に行くたびに、心の中で思うんですよ。そこ、削っちゃ絶対ダメだよな、って。だって、お客さんが新しいお札しか持ってなかったら、その時点で「買えない」んですよ。売上の話じゃなくて、入口の話なので。

千円札を数える手元、レジの前

中古だから、メンテナンスも先に

もう一つだけ。

中古なので、やっぱりガタは来ます。中にホコリが溜まって、紙幣を送る部分のゴムが劣化して。たまにエラーが出るようになって、その頻度がだんだん上がってきた。

で、僕はここでも、待たずにフルメンテナンスに出しました。 修理だけなら1万5千円くらいで済んだんですけど、ゴムの交換とセンサーの調整まで全部やってもらって、4万円くらい。

エラーが出るたびにスタッフが対応する、その手間を考えたら、安いんですよ。両替機を入れた理由と、まったく同じ理屈です。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも書いておきます。

「33万円、回収できたんですか?」

これ、正直に言うと——数字では、出てません。 両替機を入れて売上が上がった、という話じゃないので。

でも僕、回収の考え方が違ってて。買ったのは「売上」じゃなくて、**「呼ばれない時間」**なんです。1日15回、スタッフが手を止めなくて済む。それが開店からずっと続いてる。それで十分、元は取れてると思ってます。

「中古で、よく怖くなかったですね」

まあ、怖さはありましたよ。でも、業務用の機械って、専門の業者さんがちゃんといて、保証もつけてくれるんですよね。僕は、そこを信じました。実際、ユニット交換もメンテナンスも、同じところで全部やってもらえてます。

もし同じことで悩んでる方がいたら、まずは中古から探してみるのがいいと思います。新品じゃないと、って思い込んでたら、僕は33万円じゃ済んでなかったので。

楽天で「両替機 中古」を探してみる

「先に払うって、資金繰り的にきつくないですか」

きついです。22万も、4万も、ぽんと出る金額じゃない。ただ、朝7時から深夜1時だった僕が9時に帰れるようになった話でも書きましたけど、うちは「手間を減らすこと」に、ずっとお金と時間を使ってきてるんですよね。両替機は、その中でいちばん分かりやすい一件だった、というだけで。

閉店後、両替機の横で灯りだけがついている店内

設備投資の基準は、「手間が消えるか」

まとめますね。

うちの設備投資の基準は、たった一つです。その手間が、消えるか。

「両替お願いします」は、33万円で消えました。新紙幣への対応は、みんなが引っ張る中で、半年前に22万円で済ませました。エラーは、4万円で先に潰しました。

全部、同じ理屈です。どうせやるなら、早くやる。 後回しにした分だけ、手間は利子つきで返ってくるので。

券売機の横に立ってる、あの地味な機械。券売機の前の10秒の話を書いたときは触れませんでしたけど、あいつも、うちの店の入口を、静かに守ってくれてるんですよね。