雨の朝「今日はダメだ」と思ってた店主が、67日分のレシートを数えたら——犯人は雨じゃなかった

雨の朝、車のフロントガラス越しに見える道

雨の朝って、店に向かう車の中で、もう分かるんですよ。

ワイパーがせわしなく動いてて、道路がびしゃびしゃで。僕、そこで、ほぼ毎回こう思ってます。

「あ、これダメだな。こんなんじゃ、お客さん来ねえよ」

正直に言うと、そうです。で、店に着くまでのあいだに、「今日は、ちょっと仕込み減らそうかな」って決めちゃう。雨の具合を見ながら、ですね。

今日はその「雨の日は売れない」って話を、レシートの数字で確かめてみた話です。

結論から言うと——犯人は、雨じゃありませんでした。

67日分のレシートを、天気と並べてみた

うちの店、毎日の締めのレシートを写真に撮って、全部データにしてるんですよ。売上、客数、何が何杯出たか。そこに、その日の天気と気温と雨の量をくっつけてある。

今年の6月末から9月の半ばまで、67営業日ぶん。そのうち、10ミリ以上しっかり降った日が18日ありました。

で、雨の日とそうじゃない日を、比べたんです。

ただ、そのまま比べるとズルになるんですよね。うちは日曜と木曜で、売上が4割くらい違うので。雨がたまたま平日に多く降ってたら、それだけで「雨の日は売れない」ように見えちゃう。

だから、同じ曜日どうしで比べました。 雨の木曜と、晴れの木曜。雨の日曜と、晴れの日曜。

結果、どうだったと思います?

雨の日の売上は、だいたい6%減。 ほぼ、誤差です。

いちばんすごかったのが、この夏いちばんの大雨の日。1日で100ミリを超えた日です。100ミリって、けっこうな雨ですよ。外、見えないくらいの。

その日、同じ曜日の平均より、7%多く売れてました。

……え、って。朝、車の中で「こんなんじゃ来ねえよ」って言ってた、あの日ですよ。

雨の日の店の入口、傘立てに濡れた傘が何本も差さっている

実は最初、「雨で26%減る」って出てたんです

で、ここからが、ちゃんと書いておかなきゃいけないところで。

この分析、最初にやったのは数日前なんですよ。前に種明かししたとおり、僕はこういう数字の作業をAIと一緒にやってて。そのときに出た答えが、これでした。

「雨10ミリ以上の日は、売上26%減・客数29%減」

あー、やっぱりな、って思いました。体感とも合ってたので。で、そのままメモに残して、記事のネタにしようとしてた。

今日、記事を書く前に、AIがもう一回計算し直したんです。そしたら——合わない。 同じデータで、何回やっても、26%にならない。

どうやってその数字が出たのか、正直、はっきりとは分かりません。ただ、ひとつ心当たりがあって。火曜日だけで比べると、ちょうどマイナス26%になるんですよ。

数字って、切り方ひとつで、こうなるんです。ウソはついてない。でも、切り方を間違えると、まったく違う話になっちゃう。

なので、ここで訂正させてください。前に出した「雨で26%減」は、間違いでした。すみません。

本当の犯人は、暑さでした

じゃあ、何が売上を下げてたのか。

データをひっくり返して見ていったら、はっきり出てきたのが、気温でした。

最高気温が32度を超えた平日は、売上もお客さんの数も、約18%減。 雨の3倍くらい効いてます。

これ、数字を見て、すごく納得したんですよね。暑い日って、ほんとに、きつくて。

店に向かう途中から、もう暑いじゃないですか。車の冷房をガンガンに効かせて、着いて、店のドアをバンって開けて、一歩踏み込んだ瞬間——もわっ、とくるんですよ。換気扇は回してるんです。回してるんですけど、もわっとくる。

そこから仕込みをして、エアコンももちろんつけて。でも、仕事が終わったあとの疲れが、暑い日とそうじゃない日で、倍違う。 マジで。

で、思ったんです。僕がそう感じてるってことは、お客さんも同じなんだよな、って。

32度の昼に、熱々のラーメンを食べに行こうと思うか。行く人は行く。でも、何割かの人は「今日はやめとこう」ってなる。当たり前ですよね。店の中がもわっとしてるのと同じくらい、外を歩いてくるお客さんも、もわっとしてるので。

雨の日は、傘をさせば来られる。でも暑さは、傘じゃ防げない。

真夏の昼、湯気の立つ厨房で額の汗を拭う腕

間違っていい。大事なのは、そのあと

ここまで書いて、ちょっと考えたんです。この記事、「間違ってました」のところ、消して書くこともできたなって。最初から正しい数字だけ載せて、何事もなかったように。

でも、やめました。

僕はね、間違っていいと思ってるんですよ。完璧なんて、できないので。僕も完璧じゃないし、AIも、まだまだ完璧じゃない。

大事なのは、間違ったあと、どうするかなんです。

間違ってたら、素直に「すみません」と言う。で、直す。それを次につなげる。そのままにしない。 アフターフォローのほうが、最初の正解よりずっと大事で。

これ、店でも全部そうなんですよ。ラーメンの味がブレた日も、注文を間違えた日も、スタッフへの言い方を間違えた日も。ミスそのものより、そのあとの一手で、お客さんもスタッフも、見てるところが決まる。

今回で言うと——もし「26%減」を信じたままだったら、僕は雨の朝のたびに、仕込みを削り続けてたわけです。本当は、来るお客さんのぶんまで。 間違いを放っておくと、こうやって毎日の判断に、静かに混ざっていくんですよね。

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも、書いておきます。

「67日で、何が分かるんですか?」

おっしゃるとおりで。これ、ほぼ夏だけのデータなんですよ。冬の雨とか、雪の日がどうなるかは、まだ分かりません。18日ぶんの雨の日も、多くはないです。

なので、「雨の日は売上が落ちない」とまでは言いません。言えるのは、「少なくともこの夏、僕が思ってたほどは落ちてなかった」ってこと。冬が来たら、また数えます。

「じゃあ、雨の日も仕込みは減らさないんですか?」

減らす量を、減らします(笑)。

ゼロにはしないです。雨の日にちょっと暇な時間があるのは、体感として本当なので。ただ、朝の車の中の「こんなんじゃ来ねえよ」で決めるのは、やめようと思ってます。削るなら、雨の朝じゃなくて、猛暑の平日の朝。数字は、そう言ってるので。

「で、雨で暇なとき、何してるんですか?」

「しょうがねえや」って言って、裏で本を読んでます。それか、体を休めるか。どっちかです。

これは前に書いた、暇な日の過ごし方と同じで。今日の売上は、もう決まってるので。ジタバタしても変わらない。だったら、未来の仕込みに使う。

ちなみに裏で読んでる本、僕が実際に読んだものを一冊置いておきますね。

楽天で『獺祭の口ぐせ』を探してみる

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雨上がりの夕方、濡れた路面に店の窓明かりが映っている

雨のせいにする前に、数えてみる

まとめますね。

雨の朝の「今日はダメだ」は、この夏に限って言えば、ほとんど外れてました。 本当に効いてたのは、暑さ。それと、曜日。

体感って、けっこうウソをつくんですよ。雨の日の暇な1時間は強烈に覚えてるけど、雨なのに忙しかった日のことは、忘れちゃう。覚えてる日だけで平均を取ってるんです、頭の中で。

だから、一回、数えてみる。で、数えた数字も、もう一回疑う。間違ってたら、「すみません」って言って、直す。

雨の朝、車の中で「こんなんじゃ来ねえよ」ってつぶやいてる店主さんがいたら——その雨、たぶん、思ってるほど悪者じゃないですよ。 傘立てに、ちゃんと傘、増えていくので。