休みは、決めるから休みになる——うちの営業時間と定休日の、全部の理由

昼下がり、のれんが外された静かな店先

今日は、営業時間と定休日の話をします。

地味なテーマに聞こえますよね。でもね、あの数字、一個一個に全部理由があるんですよ。うちの場合を、種明かししていきます。

うちの営業の形

うちはね、昼前に開けて、夜は早めに閉める店です。

で、平日は、午後に2時間の中休みを取ってます。昼のピークが終わって、夜の部が始まるまでの、お客さんが来ない時間帯。土日祝は中休みなしの通し営業。

この「中休み」がね、今日の本題です。

最初は、通しでやろうと思ってたんですよ

正直に言うとね、開店のとき、平日も通しで営業しようかと思ってたんです。開けてれば、誰か来るかもしれないし。

でも、やめました。理由はふたつ。

ひとつは、単純に体力

もうひとつが大事で——「休めない」っていうのは、長期で見ると、じわじわ効いてくるんですよ。一日単位なら気合いでもちます。でも店って、10年単位の長期戦なので。すり減り続けたら、いつか折れる。

「来ない30分」では、休めないんですよ

で、ここが今日いちばん言いたいところです。

こう思う人、いると思うんですよ。「お客さんが来ない時間があるなら、そこで勝手に休めばいいじゃん」って。

——違うんです。それじゃ、休めないんですよ。

たとえば、お客さんが30分来なかったとするじゃないですか。結果的には30分の空き時間です。でもその30分、僕の心はどうなってるかというと——

「来るか分からない30分」なんですよ。

いつ戸が開くか分からない。だから、座ってても、心がずっと動いてるんです。エンジンがかかりっぱなし。体は止まってても、休めてない。

でも、店を閉めて「午後のこの2時間は休憩」って決めてたら、どうなるか。

その2時間はね——お客さんが、絶対に来ないんですよ。 戸は、開かない。だから、心から休める。

「来るか分からない時間」と「絶対に来ない時間」。同じ空き時間なのに、まったくの別物なんです。

休みっていうのは、時間が空いたら生まれるものじゃない。閉めると決めるから、休みになるんです。

休憩中の厨房で、湯呑みを持って一服する手元

定休日が月曜な理由

定休日は、月曜です。

これ、実はセオリーから外れてるんですよ。飲食店って、週の中日——水曜あたりが客足が落ちやすいので、そこで休む店が多いんです。

でも僕は、シンプルにこう考えました。

日曜日が、一番きつい。だから、その次の日に休みたい。

それだけです(笑)

日曜に全部出し切って、月曜に回復する。中日に休んで前後半に分けるより、僕は「出し切ってから休む」リズムのほうが合ってたんですよね。マラソンの給水を、坂を登り切った直後に置いてる感じです。

鉄の掟と、唯一の例外

でね、ここからは僕のポリシーの話です。

前にも書きましたけど、僕はどんなに疲れてようと、店を開けます。 そこは鉄の掟でやってます。お客さんからしたら、休みは休みなので。

ただ——唯一、店を閉めて休んだことがあるんですよ。

お葬式です。 お世話になった人の。

何のために、仕事をやってるのか

本当はね、営業しなきゃいけない日でした。鉄の掟からいえば。

でも、その人との最後の別れなんですよ。

そのとき考えたんです。**俺は、何のために仕事をやってるんだ?**って。

人生を良くするために、仕事をしてるんですよ。仕事のために、人生があるんじゃない。

だとしたらね——お世話になった人のお葬式に行かない人生って、どうなんだと。それをやったら、何のために働いてるのか分からなくなる。

だから、行きました。お昼だけ営業して、午後は閉めて。あれは、休んだんじゃなくて、人生のほうを営業した日だと思ってます。

ちなみに、この「人生のために働く」って軸のあたりで、僕が実際に読んだ本です。気になった方はどうぞ。

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……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも書いておきます。

「中休みの2時間、機会損失じゃないですか?」

数字だけ見れば、そうです。開けてれば、ゼロではなかったはずなので。

でも、天秤のもう片方に乗ってるのは**「10年続く体と心」**なんですよ。2時間の売上と、長期戦の持久力。うちは後者を取りました。すり切れて店を畳んだら、機会損失どころじゃないので。

「月曜に来たかったお客さんは、どうするんですか」

申し訳ないな、と思ってます。正直に。

でも、全員に合わせる営業時間は存在しないんですよ。どこかを閉めれば、誰かの「行きたかった」とぶつかる。だったら、店主がいちばんいい状態で立てる時間割にするのが、結局お客さんのためだと思ってます。すり減った店主の一杯より、回復した店主の一杯のほうが、絶対うまいので。

「葬式で閉めるのって、『何があっても開ける』と矛盾してません?」

——してないんですよ。同じ一本の軸から出てるんです。

「何があっても開ける」のは、人生を良くするために仕事に本気だから。「葬式は閉める」のは、仕事より人生が上位だから。——どっちも、「人生のために働く」という順番を守ってるだけなんです。

矛盾するのはむしろ、疲れたからって理由で閉めて、葬式に行かずに開ける——軸のない開け閉めのほうだと思ってます。

月曜の朝、誰もいない店内に差し込む光

営業時間は、人生観の時刻表

まとめますね。

うちの営業時間には、全部理由があります。

中休みは、**「休みは決めるから休みになる」**から。月曜定休は、出し切ってから休みたいから。それでも開け続けるのは、お客さんからしたら休みは休みだから。そして葬式に閉めるのは、人生を良くするために働いてるから。

営業時間って、ただの数字じゃないんですよ。

あれは、店主の人生観の時刻表なんです。

よその店の営業時間を見るとき、ちょっとそう思って見てみてください。「なんでこの店、この時間に閉めるんだろう」——その裏に、たぶん物語がありますよ。