「夫婦経営って、ケンカしません?」——一番背中を任せられる人が、そばにいる話
2026-09-08

今日はね、嫁の話をします。
前に、辞めていくスタッフに嫁がギフトを渡した話を書いたら、あの記事の本当の主役は嫁だったわけですけど(笑)、ちゃんと一本書いたことがなかったので。
「ずっと一緒で、嫌になりません?」
夫婦で店をやってるって言うとね、だいたい聞かれるんですよ。
「ケンカしません?」「仕事も家も一緒って、嫌になりません?」
実際、夫婦経営でうまくいかなくなった話って、よく聞くんです。だから聞かれるのも分かる。
でも、正直に答えますね。
全然、嫌じゃないです。むしろ、落ち着くんですよ。
だってね——自分の一番、背中を任せられる人なんですから。その人がそばにいて嫌なわけがない、っていうのが僕の実感です。
役割分担は、シンプルに決まりました
うちの分担はこうです。
僕は、店を運転して、売上を作る。嫁は、シフトと給料計算と、裏方。
どうやって決めたか?——話し合いすら、ほぼしてません。
僕がラーメンを作れて、嫁は作れない。 それだけです(笑)
だから開店のときから、僕が厨房、嫁が接客。そこから始まって、今の形に落ち着きました。たぶん、夫婦でやってるお店って、どこも似たような決まり方なんじゃないですかね。
嫁は今、あえて店に出てません
ここ、ちょっと面白いところなんですけど。
今、嫁はほとんど店に出てないんですよ。あえて、です。
店はスタッフで回すようにして、嫁には裏方と、子どもを見てもらう。オープン当初はずっと店に入ってたんですけど、少しずつ減らして、裏方に回ってもらいました。
じゃあ完全に引退かというと、違うんです。
最終兵器なんですよ。
どうしても人が足りない、店が回らない——そういうときに、出てきてもらう。で、実際、出てきてもらうと締まるんです。いないと困る人が、温存されてるっていうのが、うちの店の隠れた安心材料です。
ケンカは、しません。でも意見は割れます
さて、いちばん聞かれるやつに答えますね。
ケンカは、しません。でも、意見が違うことは、もちろんあります。
たとえば接客。どこまでやるか。
僕は「ここまでやってれば、OKだよ」。嫁は「いや、もっとやるべきだ」。——割れるわけですよ。
でもね、これ、ケンカにならないんです。変な雰囲気にもならない。
なんでか、考えたことがあって。
主語が「店」だからなんですよ。
「俺が正しい」「あなたが間違ってる」の話じゃなくて、「この店は、どうやるのが一番いいか」の話をしてる。勝ち負けを決めてるんじゃなくて、よりいい方法を二人で探してる。——それは、ケンカじゃなくて議論なんですよね。
主語が「俺」と「お前」になった瞬間、議論はケンカになります。主語を「店」に置いてる限り、割れた意見はぜんぶ材料です。

人生で一番きつかった時期を、二人で越えました
創業期の話も、しておきますね。
オープンしたては、ご祝儀相場というか、お客さんがどっと来るんですよ。ありがたい話なんですけど、体制ができてないところに波が来るので——
僕も嫁も、睡眠時間がありませんでした。
僕は夜中の1時に帰ってきて、朝7時にはまた出ていく。嫁もそこまでじゃないけど、帰りが22時。まだ子どもがいなかったから全部を店に注げたんですけど、それにしても、です。
寝る時間がないのって、本当にしんどいんですよ。 あれが、うちの家庭のいちばんきつかった時期です。
でもね——あれを二人で乗り越えられたのが、でかかった。
「うちら、割と何とかなるな」っていう自信になったんです。あの時期を越えた二人なら、この先の大抵のことは越えられる。そういう土台が、あのしんどさの下に埋まってました。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも書いておきます。
「それ、ただののろけですよね?」
——はい(笑)。
否定しません。でも、ひとつだけ持って帰ってほしいものがあるんですよ。
「主語を店にする」——これです。夫婦経営で揉めてる方がいたら、意見が割れたとき、主語を確認してみてください。「俺は/あなたは」で話してるか、「うちの店は」で話してるか。それだけで、同じ議論が別物になるので。
「奥さんを裏方に下げたの、もったいなくないですか?」
最終兵器はね、温存するから兵器なんですよ。
それに、シフトと給料計算って、裏方どころか店の心臓部です。あれを全部任せられるから、僕は運転と売上に集中できる。下げたんじゃなくて、いちばん任せられる場所に置いたんです。
「背中を任せるって、具体的にどういうことですか?」
前に書いた話が、そのまま答えです。
辞めていくスタッフに、僕は「ありがとうございました」を絞り出すのがやっとだった。嫁は15分話して、ギフトに手紙を付けた。
僕にできないことを、僕より上手にやる人が、同じ店を見てる。——それが「背中を任せる」ってことだと思ってます。

今日もシフト表は嫁が作って、僕はスープを炊く
まとめますね。
夫婦経営がうまくいくコツを聞かれたら、僕はたぶん、こう答えます。
意見が割れたら、主語を「店」にすること。 そして、相手のできることを、心から任せること。
ずっと一緒で嫌にならないの?って聞かれたら、これからもこう答えます。
むしろ、落ち着くんですよ。
一番きつかった時期を隣で越えた人が、今日も隣にいる。店には出てないけど、シフト表という形で、毎日店の中にいる。
——今日もシフト表は嫁が作って、僕はスープを炊いてます。それがうちの店です。