「だが断る」——賄いを頼まれた店長の、返事の話
2026-09-08

昨日あった、ちょっと面白い話をさせてください。
今日は軽い話です。重い話が続いたので、たまにはね。
「賄い、お願いします」
うちのスタッフの女の子がね、「賄い食べたいんで、お願いします」って言ってきたんですよ。
うん、分かったよ——と思ったんですけど、そこで僕、ピーンと来たんです。
この子ね、アニメとか漫画がすごく好きな子なんですよ。オタクってほどじゃないんだけど、けっこう詳しい。前に一度、漫画の話で盛り上がったことがあって、女性であの漫画に詳しい人はあんまりいないから、覚えてたんですよね。
で、僕はこう返しました。
「賄い、いいよ。今日食べたいの?」
「はい」
「ラーメンでいい?」
「はい」
——「だが断る」
けたけた笑ってくれました
これね、『ジョジョの奇妙な冒険』の岸辺露伴っていうキャラクターの、超有名なセリフなんですよ。知ってる人は、今この瞬間ニヤッとしてるはずです。
そしたらその子、けたけたけたけた笑ってね。
そりゃそうですよね。バイト先の店長から、まさかジョジョの名言が飛んでくるとは思ってないわけですから。
そこからちょっと、店の空気が和やかになりました。楽しいバイトの時間になったと思うし——正直、僕自身が楽しかったです(笑)
ちなみにもちろん、そのあとちゃんと作りました。断ってません。
実は僕も、子どもの頃から好きなんですよ
種明かしをするとね、僕自身がジョジョ好きなんです。漫画もアニメも、子どもの頃から。
あの漫画って、面白い性質があって——知ってる人はめちゃくちゃ知ってる。知らない人は、一切分からない。 きれいに分かれるんですよ。絵も独特ですしね。
でも、好きな人同士だと、名言とかポーズとかで一瞬で盛り上がれる。合言葉みたいなもんなんです。
あの子の場合、それが当てはまった。だから「だが断る」の一言が、その子専用の返事として機能したんですよね。
ちなみに僕が読んでるのは原作の漫画です。気になった方はどうぞ。

スタッフに合わせて、トークを変えてます
で、今日書きたかったのは、ここなんですよ。
僕ね、スタッフに合わせて、話す内容を変えてるんです。
漫画好きの子には、漫画の話。ジョジョが通じる子には、ジョジョの名言。別の子には、また別のチャンネル。相手の周波数に、こっちが合わせにいくんですよ。
これ、特別なことをしてるわけじゃなくて——前に書いた話の続きなんです。
雑談で聞いた話を、覚えておく。スタッフの旦那さんが盃で酒を飲む話を覚えてたから、旅先で枡が目に入った。あの子がジョジョに詳しいのを覚えてたから、賄いの注文で「だが断る」が出せた。
覚えてるから、その人専用の一手が打てるんですよね。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも書いておきます。
「店長がスタッフに媚びてません?」
うーん、媚びとはちょっと違うと思ってて。
媚びって、嫌われたくなくてやることじゃないですか。僕がやってるのは、その場を楽しくしたくてやってることなんですよ。現にあの一言、僕がいちばん楽しんでましたから(笑)
それに、注意するときはちゃんと注意します。楽しくすることと、締めるところを締めることは、両立するので。
「全員にそれ、できます?」
できません。通じる相手にしか、やりません。
ジョジョを知らない子に「だが断る」って言ったら、ただの意味不明な店長です。むしろ怖い。
だからこれ、相手を見てから出す技なんですよ。同じギャグを全員に言うのは営業トークで、その人にだけ通じる一言を選ぶのが雑談なんだと思います。
「たかが賄いの返事に、そこまで考えます?」
考えてないです(笑)。ピーンと来ただけです。
でもそのピーンが来るのは、日頃から雑談して、覚えてるからで。仕込みがあるから、とっさの一言が出るんですよ。ラーメンと一緒です。

職場の楽しさは、専用の一言でできてる
まとめますね。
「賄いお願いします」に対する返事なんて、「いいよ」の一言で済むんですよ。それで何の問題もない。
でも、そこにその子専用の一言を挟むと——けたけた笑って、空気が和やかになって、バイトの時間がちょっと楽しくなる。
コストは、ゼロです。仕込みは、日頃の雑談だけ。
職場の楽しさって、たぶん、こういう「専用の一言」の積み重ねでできてるんじゃないかなと思ってます。
——ちなみにこの記事のタイトル、ジョジョを知らない人には全然意味が分からなかったと思います。それでいいんです。 あの子に通じたので。