★1の口コミ、返さなくていいと思ってました——でも返信を読んでるのは、書いた本人じゃなかった

閉店後のカウンターに置かれたスマートフォンと、湯気の消えた丼

正直に言いますね。

Googleの口コミに★1がつくと、僕、けっこう腹が立つんです。

「お客様の声は宝です」みたいな、きれいな話じゃなくて。普通に、腹が立つ。

今日はその、腹が立ってた店主が、悪い口コミに返信するようになるまでの話です。返信なんて面倒くさい、意味あるの?って思ってる店主さんにこそ、読んでほしいんですよね。

★1にも、4種類ある

あらためて、うちについた★1を並べて見てみたんですよ。

そしたら、同じ★1でも、中身がぜんぜん違うんです。

ひとつめ。「卵がよくない」。

これはね、まあ、確かにそうだなって。ちょっと甘かったな、と。これは反省です。言われて当然のやつ。

ふたつめ。「コクがない」「麺が茹ですぎ」。

これは……正直、うるせえなって思ってます(笑)。うちはすっきりした味を狙って作ってるので、そこは好みの話なんですよね。言われるたびに、ちょっと腹が立つ。

みっつめ。駐車場のことで怒ってる口コミ。

張り紙もしてるんですよ。店の前のパイロンの上にも「ここに止めてください」って出してる。それを見てくれよ、と。見ないで言うのは、やめてほしい。

よっつめ。星だけで、文章なし。

これはもう、知ったこっちゃない、っていうのが本音です。

ね、こうやって分けると、ぜんぜん別物でしょ? でも、画面の上ではぜんぶ同じ「★1」の顔をして並んでる。だから、まとめて胸にくるんですよね。

冷ますつもりが、放置になった

じゃあ、なんで返信しなかったのか。

面倒だったのもあります。でも一番は、頭に来てるまま返したら、絶対に喧嘩口調になるって分かってたからなんです。

だから、まず冷まそう、と。ほとぼりが冷めてから返せば、ある程度は冷静に書けるから。

これ、判断としては間違ってなかったと思うんですよ。スープだって、火が強すぎるときは一回おろしますから。

ただね。冷ましてる間に、次の口コミが来る。それもまた冷ます。また来る。

気づいたら、鍋がいくつも積み重なって、どこから手をつけていいか分からなくなってた。冷ますつもりが、ただの放置になってたんです。

それと、もうひとつ、正直な気持ちを書いておきます。

こういう口コミを読むと、僕、「この人、自分で店をやったことはないんだろうな」って思っちゃうんですよ。材料が上がって、人が足りなくて、それでも毎日同じ味を出す。その難しさを知らないから、ひと言で書けるんだろうな、って。

悔しかったんです。 それが、返信の手を止めてた一番の正体かもしれません。

仕込み中の厨房で、火からおろされて静かに冷めていく寸胴鍋

返信を読んでいるのは、温度ゼロの人たち

で、ここからが、今日いちばん書きたかったことです。

最近、AIを使って、溜まってた口コミにまとめて返信したんですね。そのとき、ひとつ気づいたことがあって。

返信を読むのは、★1を書いた本人だけじゃない。

むしろ本人より、あとからその口コミを見に来る人のほうが、ずっと多いんですよ。「この店、どうなんだろう」って調べに来た人たち。

その人たちって、温度ゼロなんです。

怒ってもないし、店の味方でもない。ただ、フラットに眺めてる。

そこに、店主が喧嘩腰で言い返してたら、どう見えるか。

「何、熱くなってんだ、こいつら」ですよね。★1の中身がどんなに的外れでも、言い返した店のほうが、ちょっと怖く見える。

だから、返信で狙うのは、書いた本人を言い負かすことじゃないんです。見に来た人に、**「あ、この店って誠実なんだな」**と思ってもらうこと。

これ、僕にとっては新しい気づきでした。

AIは、一枚板

じゃあ、腹が立ってるのに、どうやって誠実な文章を書くのか。

僕がやったのは、本音をAIにしゃべることです。

「うるせえな」とか「張り紙見てくれよ」とか、そういうのも含めて、スマホにそのまま話す。そのうえで、「見に来た人が読んで、誠実に見える返信にして」と頼む。

そうすると、言い分の中身はちゃんと残したまま、角だけ取れた下書きが出てくるんですよ。あとは、自分の店の言葉に直して、投稿するだけ。

返し終わったときの感覚は、なんて言えばいいかな。

一枚、板を挟んでる感じなんです。

自分の言葉を、自分の口調のまま相手にぶつけてない。ダイレクトアタックじゃない。間に、クッションがある。だから、★1にも返せたんだと思います。

おもしろいことがあってね。返信した★1の方のうちひとりが、そのあと、自分で口コミを書き直してくれたんですよ。きつかった一文が消えて、表現がやわらかくなってた。

もちろん、全員がそうなるわけじゃないです。でも、板を一枚挟んで返したら、向こうもちょっと力を抜いてくれた。そういうことも、あるんですね。

で、返信すると、順位は上がるの?

ここ、気になりますよね。僕も気になって、調べてみたんです。

よく「口コミに返信するとGoogleマップの順位が上がる」って言われるじゃないですか。でも、Google自身は、そうはっきりとは書いてないんですよ。

Googleのヘルプに書いてあるのは、順位は「関連性・距離・知名度」で決まるということ。返信については、「有用な返信は、ビジネスの注目度を高めるのに役立ちます」くらいの書き方です。「返信したら順位が上がります」とは、どこにも書いてない。

じゃあ意味がないのかっていうと、そうでもなくて。

アメリカの研究で、ホテルの口コミを調べたものがあるんです。返信を始めたホテルは、口コミの数が12%増えて、評価が平均0.12星上がった。 理由がおもしろくて、「店が読んでると分かると、根拠のない文句を書く人が減るから」なんですって。

つまり、返信が順位を直接押し上げるというより、返信すると、口コミの中身のほうが変わっていく。僕の★1が書き直されたのも、たぶん、これなんですよね。

ここは正直に書いておきます。返信したら順位が上がる、とは僕も約束できません。 うちでも、そこまでは測れてないので。

(出典:Google ビジネス プロフィール ヘルプ「Google でのローカル検索結果のランキングを改善する方法」/Proserpio & Zervas, Marketing Science, 2017)

夕方、店の外から見た、灯りのついた小さな飲食店の入口

返信は、謝罪文じゃない

……と、ここまで書くとね、「いや、それでも面倒くさいよ」って思いますよね。

分かります。僕も、同業の店主さんって、口コミを割と軽く見てる人が多いんじゃないかなと思ってて。困ってるというより、「なんでそんな面倒なこと、しなきゃいけないんだ」って。

僕自身、返信に意味がないと分かったら、たぶん返さないです。

でもね、今はこう思ってます。

口コミの返信は、お客さんへの謝罪文じゃない。店の考え方を見せる場所なんだ、って。

見に来た人は、★1の中身より、それに店がどう答えたかを見てる。そこに、その店の考え方が出るから。

面倒だと思ってる店主さんほど、一回、本音をスマホにしゃべってみてください。板を一枚挟めば、案外、返せますから。


やり方をまとめたnoteを書きました。 本音をしゃべってAIに下書きさせる手順と、そのまま使える指示文、返す前のチェック表をまとめています。★1の実例1件は、無料で読めます。

▶ 口コミ300件以上に返信してきたラーメン店主の、AI返信の下書き帳(note)