うちの店のBGMは、ラジオです——競馬中継が流れるラーメン屋の話
2026-09-21

今日はね、ちょっと変わった話をします。店で流してる音楽の話。
たぶん、経営の役に立つ話ではないです(笑)。でも、なんか書きたくなっちゃったんです。
うちのBGMは、ラジオです
先に言っちゃうと、うちの店で流れてるのはラジオです。
音量は、うるさくない程度。でも、ちゃんと聞こえる。カウンターに座って、ふっと耳を澄ませば「あ、ラジオだな」って分かるくらい。
今どき、ラジオを流してるラーメン屋って、あんまりないですよね。正直。
有線とか、店主のこだわりのプレイリストとか、そういうのが普通じゃないですか。うちは、ラジオです。
最初はCDにするつもりだった
開店のときはね、CDを流そうと思ってたんですよ。自分の好きな曲を、店に流したかったんです。
でも調べてみたら、お店で音楽を流すには権利の問題があるらしくて。買ったCDだからって、自由に流していいわけじゃないんですね。ちゃんとやろうとすると、手続きとお金がかかります。
で、まあ、そこまでして流すほどのこだわりも、当時はなくて。とりあえずラジオ。
その「とりあえず」が、もう何年も続いています。
競馬が流れた日
ラジオってね、こっちで選べないじゃないですか。何が流れてくるか。
ある日、営業中に厨房で麺を上げてたら——競馬の中継が流れてきたんですよ。
「第4コーナーを回って——」って。
いや、ラーメン屋で競馬中継って(笑)。麺を茹でながら、内心クスッとしちゃって。競馬が流れるラーメン屋、なかなかないぞって。
さすがに場違いなんで、今はその局は流してないんですけどね。でも、あの瞬間は、ちょっと好きでした。
演歌が流れる日もあります。演歌とラーメンは、まあ、合わなくもないです。

お客さん、聞いてないんですよ
で、ここからが本音なんですけど。
競馬が流れようが、演歌が流れようが——お客さん、たぶん聞いてないんですよ。
だってみんな、iPhone眺めてますからね。丼が来るまでスマホ、食べながらもチラチラスマホ。耳は、店のほうを向いてないんです。
だから僕、店のBGMって、お客さんのためというより、店の空気のためにあるんだと思ってて。
無音の店って、緊張するんですよ。麺をすする音、食器の音、厨房の音。それだけだと、なんか、お互い気を遣う。ラジオが薄く鳴ってると、その隙間が埋まります。誰も聞いてないけど、無いと困る。 そういう存在です。
ラジオのいいところ、困るところ
ラジオにしてよかったなって思うのは、時報ですね。
「ピッ、ピッ、ピッ、ポーン」って鳴ると、「あ、もう12時か」って気づく。手が止まりません。時計を見れば済む話なんですけど、厨房で手が塞がってると、耳で分かるのがありがたいんですよ。
困るのは、天気が悪い日。
雪が降るとね、ノイズが走るんです。ザーッて。こっちは雪国なんで、冬はけっこうな頻度で。お客さんがいる前で「ザザッ」ってなると、ちょっと恥ずかしい。でも直しに行く手も空いてない。そのまま営業しています。
自分の曲は、流しません
これ、聞かれることがあるんですけど——僕、YouTubeで音楽を流すチャンネルをやってるんですよ。落ち着いた曲を並べてるやつ。
で、「それ、店で流せばいいじゃん」って言われる。
流しません。あれは店とは関係ないから。
店は店、チャンネルはチャンネル。混ぜると、どっちも中途半端になる気がします。店で流す音は、お客さんの食事の邪魔をしないことが一番で、僕の趣味を聞かせる場所じゃない。
……って言うと格好いいんですけど、単純に、自分の作ったものを自分の店で流すのが、ちょっと照れくさいっていうのもあります(自分で言うのもなんですけど)。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも書いておきます。
「こだわりがないだけでは?」
——はい、そのとおりです。BGMにこだわりは、ないです。
でもね、こだわらないことを決めてる、とは言えると思ってて。こだわる場所は、スープと麺と、お客さんの前での動き方。そっちに全部使ってるので、音楽まで回らないんです。ラジオは、こだわらないという判断です。
「権利の問題、ちゃんと調べました?」
正直、開店当時にざっと調べただけです。今はもっと簡単に、お店向けの音楽サービスがあるらしいですね。いつか変えるかもしれません。でも、今のところ困ってないので、ラジオのままです。

誰も聞いてない音が、店を支えてる
まとめますね。
うちのBGMはラジオ。CDは権利の問題で見送って、とりあえずで始めたラジオが、何年も続いてる。競馬や演歌が流れることもあるけど、お客さんはたぶん聞いてない。時報はありがたくて、雪の日はノイズが走る。自分の曲は流さない。
誰も聞いてない。でも、無いと店の空気が変わる。
店って、そういうもので、けっこう支えられてるんですよね。目立たないけど、抜くと分かるものです。
あなたの店(や職場)にも、ありませんか。誰も気にしてないけど、止めたら急に落ち着かなくなるもの。
そういうのを、大事にしていきたいなって思ってます。