明日、店主が倒れたら店はどうなるか——答えは「営業停止」です

火の消えたコンロに寸胴が置かれたままの、誰もいない厨房

明日、もし僕が倒れたら。

うちの店は、どうなると思います?

答えは簡単です。営業停止です(笑)。

笑いごとじゃないんですけどね。でも、本当にそうなんですよ。今日はその話を、正直に書きます。

スタッフにできること、できないこと

まず、スタッフにできることから。

店の掃除。お客さんへのラーメンの提供。片付け。また掃除。これは、ちゃんとできます。うちのスタッフは、そこはしっかりやってくれる。

でも、肝心かなめのところ。

仕込みと、ラーメンを作るところ。ここは、実は僕しかできないんです。

……いや、やらせようと思えば、できるんですよ。手順だけなら教えられる。でもね、そこを人に任せられるくらいなら——僕、もうとっくに店舗展開してます。

任せられないのは、技術じゃなくて「重さ」

なんで任せられないのか。

そこには、責任が乗るんです。重圧も乗る。お客さんの期待も乗る。

一杯のラーメンに、それ全部が乗っかってる。それを背負って、毎日同じ味を出し続ける。そういうことができる人って、パートさんやアルバイトさんの中には、正直、いません。いないのが当たり前なんですよね。それを背負わせる立場じゃないので。

大手のチェーンなら、できると思いますよ。誰が作っても同じ味になるように、仕組みができてる。

でも、うちはそうじゃないんです。

感覚で肉を煮て、感覚で麺を茹でて、感覚でスープを張る。

ほんとに、感覚なんですよ。今日の肉の具合とか、湯の具合とか。それを言葉にして渡すのは、簡単じゃない。

もし簡単に渡せるなら、みんなに任せて、僕は昼からお酒でも飲んでますよ。……意外と真面目に、毎日働いてます。

湯気の立つ寸胴の中の肉を、菜箸で押して確かめる手元

僕が倒れたら、スタッフは働けない

で、ここからが本題です。

僕が倒れたら、店は確実に止まる。止まるってことは——スタッフが働けないってことなんですよ。

うちでの給料を当てにしてる人もいます。学生さんは、まあ、親御さんのところで暮らしてるから、すぐに困ることはないかもしれない。でも、そうじゃない人もいます。

その人たちの働く場所が、僕の体ひとつにかかってる。そこには、やっぱり責任があるんですよね。

これが、うちの最大の弱点です。

たぶん、個人店って、どこもそんなもんだと思うんですけど。

体調管理も、仕事のうち

だから僕は、ちゃんと気をつけてます。

健康管理をする。運動もする。ストレッチもする。心のケアもする。明日、自分がベストな状態で働けるように、自分の体と気持ちを持っていく。

それも、仕事のうちなんです。

店を開けて、ラーメンを作って、お客さんに出す。それだけが仕事だと思ってたら、大間違いで。営業していない時間に、明日の自分を整えておく。そこまでが、店主の仕事なんですよ。

パートさんに「熱が何度だったら休みますか?」と聞いた話を前に書きましたけど、店主には、そもそも「休む」っていう選択肢が、ほとんどない。休んだら、店ごと止まるので。だったら、倒れないように先に手を打つしかないんです。

夜、畳の部屋でストレッチをする後ろ姿

……と、ここまで言うとね、こう思いますよね

自分へのツッコミも、書いておきます。

「じゃあ、誰かに教えればいいんじゃないですか?」

教えれば、手は動くようになると思います。でも、任せるっていうのは、手順を渡すことじゃなくて、責任と重圧と期待を一緒に渡すことなんですよね。それを渡せる相手がいたら、僕はたぶん、もう2店舗目を出してます。

「マニュアルにすれば、誰でも作れるのでは?」

チェーン店は、そうやって「誰が作っても同じ味」をつくってる。それはそれで、すごいことです。

でも、うちの味は、感覚でできてる。マニュアルにした瞬間に、別の味になる気がしてて。ここは、個人店の強みと弱みが、同じ場所にあるんだと思います。

「で、この記事、何時に書いてるんですか?」

……夜中の3時です。

健康管理が大事って話を、夜中の3時に書いてます(説得力、ゼロですね)。

なので、今から寝ます。ほんとに。

営業だけが、仕事じゃない

まとめますね。

明日、店主が倒れたら、店は止まる。

掃除も提供も片付けもスタッフができる。でも、肝心かなめの「作る」ところは、店主にしかできない。そこを任せられるなら、もう店舗展開してる。

そして店が止まれば、スタッフも働けない。だから、体調を整えるのも、心を整えるのも、ぜんぶ仕事のうち。

営業だけが、仕事じゃないんです。

個人店をやってる店主さん。今日の営業が終わったら——今日は早めに寝ましょう。僕も、そうします。