「お客さんが来たら、儲かるんでしょ?」——飲食店経営者の仕事は、閉店して帰ってからが本番です
2026-10-17

店を閉めて、家に帰る。
お風呂に入って、ご飯を食べて。
で、そこから。
「さて、どうしようか」って、考え始めるんです。気づいたら、夜中の2時とか3時。これ、たまにじゃないんですよ。わりと、いつもの話で。
今日は、その「お客さんからは見えてない半分」の話をします。経営してる人なら、たぶん全員うなずくと思います。そうじゃない人には、ちょっと意外かもしれません。
「お客さんが来たら、儲かるんでしょ?」
外から見たラーメン屋って、たぶん、こんな感じだと思うんですよ。
朝、仕込みをして。昼と夜、ラーメンを作って。片付けして、終わり。
で、お客さんがたくさん来たら、儲かるんでしょ? みたいな。
……いやいやいや。違うんですよ。
帰ってから、また本番があるんです。
営業時間って、仕事の半分なんですよね。お客さんに見えてるのは、そこだけで。残りの半分は、シャッターを下ろしたあとに始まる。しかも、こっちの半分は誰も見てないから、誰にも褒められない(笑)。

帰ってからの「本番」で、何をしてるか
じゃあ、その半分で何をしてるのか。ざっと並べると、こうなります。
| 種類 | やっていること |
|---|---|
| お金のこと | 給料計算、売上の計算、税金の計算、税理士さんとの相談 |
| 人のこと | 求人、シフト作り、仕事の教え方、スタッフ同士の揉め事の仲裁 |
| 店のこと | 壊れた物の買い直し、消耗品の補充、定休日の決め方、来月からの経営の方針 |
| 決まりごと | 就業規則、入社のときの書類、店のルール作り |
表にすると、なんかスッキリして見えますけどね。
実際は、これが一個ずつ順番に来てくれないんですよ。
給料計算してる途中で、「あ、来月のシフトどうしよう」ってなる。シフト考えてたら、「そういえば、あの人が辞めるなら求人出さなきゃ」ってなる。求人のこと考えてたら、「あ、厨房のあれ、壊れかけてたな」って思い出す。
全部、頭の中で、ぐるぐる回ってるんです。
「どうやったら、うまく回るか」をずっと考えてる
で、作業そのものより、しんどいのは、こっちかもしれません。
どうやったら、スタッフに気持ちよく働いてもらえるか。
どうやって、仕事を教えようか。
どうやったら、物事が円滑に進むか。
これ、答えがないんですよね。給料計算は、終わったら終わりです。でも、こっちは終わりがない。人が変われば、やり方も変わるので。
だから、お風呂に入ってても、ご飯を食べてても、どこかで考えてる。僕、たぶん、営業時間より、こっちの時間のほうが長いです。
いちばん重いのは、人のこと
その中でも、いちばん重いのは、やっぱり人のことです。
スタッフ同士で揉め事が起きたら、間に入らなきゃいけない。どっちの話も聞いて、どっちの顔も立てて、それでいて店は回さなきゃいけない。
それから、これは本当にリアルな話なんですけど。
ひとりの困ったスタッフが入るだけで、店の中がめちゃくちゃになることがあるんです。
周りの空気が悪くなる。注意しても、なかなか変わらない。そうすると、何が起きるか。
いいスタッフのほうが、先に辞めちゃうんですよ。
ここ、意外と知られてないと思います。困ってるのは、店主だけじゃない。真面目に働いてる人ほど、しんどくなって、離れていってしまう。
採用は確率論、という話を前に書きましたけど、「外れを引かない」ことが大事なのは、こういう理由なんです。たったひとりで、店の中身が変わってしまうので。

だから、決まりごとを作る
じゃあ、どうするか。
就業規則を作る。入社のときの書類を作る。店のルールを、ちゃんと紙にする。
地味ですよね。ラーメンとは、なんの関係もない。
でも、これがないと、何か起きたときに、店もスタッフも守れないんですよ。「言った」「言ってない」になる。そうなると、いちばん損をするのは、ルールを守って真面目に働いてる人なんです。
だから、決まりごとは、困った人を縛るためというより、いいスタッフを守るために作ってるんだと、僕は思ってます。
で、これも、夜中に作るんですよね。営業中には、作れないので。
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも、書いておきます。
「それ、自分で選んだ道でしょ?」
その通りです。だから、これは愚痴じゃないんです。誰かに代わってほしいとも、思ってません。
ただ、外から見えてる姿だけで「楽そう」「儲かってそう」って思われると、ちょっとだけ、言いたくなるんですよね。半分しか見えてないですよ、って。
「じゃあ、飲食店の開業なんて、やめとけってこと?」
いや、そうじゃないです。
ただ、「ラーメンが作れれば、店はやれる」と思って始めると、たぶん、あとで驚きます。ラーメンを作るのは、仕事の半分。もう半分は、お金と、人と、決まりごとです。その半分ごと引き受ける覚悟があるなら、やったらいいと思います。 僕は、やってよかったと思ってるので。

目に見えてるものが、全部じゃない
まとめますね。
お客さんに見えている営業時間は、経営者の仕事の半分です。 残りの半分は、閉店して、家に帰って、お風呂とご飯を済ませたあとに始まる。
お金の計算をして、人のことを考えて、壊れた物を買い直して、決まりごとを作る。いちばん重いのは人のことで、ひとりで店の中が変わってしまうこともある。だから、いいスタッフを守るための決まりごとを、夜中に作ってる。
店主が倒れたら営業停止、という話では「営業だけが仕事じゃない」と書きましたけど、今日の話も、根っこは同じです。
目に見えてるものが、全部じゃない。
だから、甘く見ないでくださいね、って話でした。
……さて。この記事を書き終わったら、僕もそろそろ、来月のシフトを考えます。