「たった15分」を、どう返すか——延長をお願いしたスタッフに、ありがとうを大げさに言う理由
2026-08-27

今日はね、15分の話をします。
「1時15分まで、お願いできる?」
うちの店、スタッフに延長をお願いすることが、けっこうあるんですよ。
1時上がりの人にね、「ごめん、1時15分までお願いできる?」って。お昼のピークが押してるときとか、どうしてもあるんです。
で、先に言っておきますね。15分ぶんの給料は、もちろん払います。 当たり前です。サービス残業なんて、絶対にさせません。
……なんですけど、今日の話は、お金の話じゃないんですよ。
店側からしたら、「たった15分」なんです
正直に書きますね。
こっちからしたら、たった15分なんですよ。
「15分くらい、残っても全然いいでしょ」って、思っちゃう。頭のどこかで。
で、スタッフのほうもね、たぶん「まあ、15分くらいは必要だよな」って思ってるんです。嫌々じゃない。ちゃんと分かって残ってくれてる。
じゃあ何も問題ないじゃないか、って話なんですけど——ここに、落とし穴があるんですよ。
「お疲れさん」だけで帰すと、何かが削れる
15分残ってもらって、上がるとき。
いつも通り、「お疲れさん」だけで帰すとするじゃないですか。
そうするとね、スタッフの中に、こういう気持ちが残るんですよ。
「……これ、当然だと思われてるな」
口には出しません。「残ってやったぞ」なんて空気も、うちのスタッフは出さない。えらいですよ、ほんとに。
でもね、「ちゃんと気づいてよね」っていうのは、絶対にあるんです。 僕が逆の立場でも、あります。
15分くらい残れるけど、それが当たり前扱いされるのは、嫌。
——この気持ち、分かる方、多いんじゃないですかね。

だから僕は、大げさに言います
なので、僕はこう言うんです。
「いやー、本当助かったわ。ありがとう!」
ちょっとね、大げさに言います。 あえて。
大げさすぎるくらいでちょうどいいんですよ。だってさ、大げさに言われたら、向こうも嬉しいじゃないですか。
同じ15分でも、「お疲れさん」だけで帰るのと、「本当助かったわ!」って言われて帰るのとでは——帰り道の気分が、全然違うはずなんです。
そしてね、これを続けてると、スタッフの中にこういう感覚が育つと思ってるんですよ。
延長は、当たり前じゃない。
店側がそれを分かってる、って伝わる。当たり前扱いしない店だって伝わる。それが大事なんです。
ここからが、今日いちばん言いたいことです
で、僕、もうひとつやってることがあって。
残ってくれた人に「ありがとう」を言ったあとね、その場に残ってる別のスタッフに、こう振るんです。
「残っててくれて、助かったよね?」
相槌を、ちょっと求める感じで。
そうすると、そのスタッフがね、こう返してくれるんですよ。
「いや、本当助かりました」
——気づきました?
その人、二人からありがとうを言われたことになるんですよ。
僕ひとりが言う「ありがとう」と、僕と同僚の二人から言われる「ありがとう」。重さが違うじゃないですか。
これね、正直に白状すると——技術的に、あえてやってます。(ここ、ちょっとずるいでしょ?)
……と、ここまで言うとね、こう思いますよね
自分へのツッコミも書いておきます。
「それ、計算でやってるんですよね。冷めません?」
——半分は計算です。否定しません。
でもね、前にメロンを配った話でも書いたんですけど、気持ちがあって、そのうえで、どうせなら効くやり方を選ぶ。 その順番なら、ずるくないと思ってるんですよ。
「助かった」は本心です。嘘は一個もない。本心を、いちばん伝わる形で言ってるだけなんです。
順番が逆になったら——気持ちがないのに技術だけ使ったら——たぶんバレます。そこは自分でも気をつけてます。
「金払ってるんだから、それで十分でしょ?」
うーん。給料は、義務なんですよ。 払って当たり前。そこに感謝の意味は乗らないんです。
考えてみてほしいんですけど、15分の延長代って、時給1,000円なら250円ですよ。
その250円が欲しくて残ってくれてるわけじゃ、ないじゃないですか。店が回らないのを見て、残ってくれてるんですよ。
だったら、返すべきものはお金だけじゃない。「気づいてるよ」を返さないと、釣り合わないと思うんです。
「大げさに言うの、わざとらしくないですか?」
これはね、相手によるかもしれません。
ただ、僕の実感で言うとね——ありがとうって、控えめに言って伝わらないことはあっても、大げさに言って怒られることは、まずないんですよ。
だったら、大げさ側に倒しておいたほうがいい。そう思ってます。

15分は、15分じゃないんですよ
まとめますね。
スタッフに15分の延長をお願いする。給料は払う。ここまでは、どこの店でもやってることです。
問題は、その15分をどう受け取ったかを、ちゃんと返してるかどうか。
「お疲れさん」だけで帰すと、15分はただの労働時間になります。
「本当助かったわ、ありがとう!」って返すと、同じ15分が貸し借りのある関係になる。……いや、貸し借りっていうと変か。「見てもらえてる」っていう安心になる、のほうが近いですね。
前に、鼻声に気づいて「調子悪いの?」って聞いた話を書きました。あれと同じなんですよ。
気づくだけじゃなくて、気づいたことを、ちゃんと口に出す。
しかもできれば、ちょっと大げさに。ついでに、隣のスタッフも巻き込んで。
——15分の延長は、250円の話じゃないんです。その人が「残ってよかったな」と思って帰れるかどうかの話なんですよ。